空間の有効活用やバリアフリー化を目的として、開き戸を引き戸にリフォームする方が増えています。
引き戸は少ない動きで楽に開閉できるため、小さな子どもから高齢者、車椅子の方まで出入りしやすいといった魅力もあります。
この記事では、引き戸のメリット・デメリット、引き戸の種類、費用相場を解説します。
また、引き戸を有効活用するためのリフォームアイデアについてもご紹介します。
引き戸にリフォームするメリット
引き戸とは、左右にスライドさせて開け閉めする扉のことをいいます。
一般的には床に設置した溝やレールの上を滑らせますが、扉を上から吊る「上吊り式」というタイプもあります。
引き戸は古くから日本の住まいに使われてきたなじみ深い家具です。現代の建築でも和室の障子や襖、網戸などに多く用いられています。
家の扉を引き戸にすることには、以下のような多くのメリットがあります。
①子どもから高齢者まで使いやすい
引き戸は他の扉に比べて開放幅が広いのが特徴です。
壁の内部に扉を引き込むこともできるため、入り口を広く開けたまま出入りすることができ、車椅子やベビーカーの出入りもストレスフリーに行えます。
最近の引き戸はソフトクローザータイプといって、勢いよく扉を閉めても静かに閉まるよう設計されているものがほとんどです。
小さな子どものいる家庭であれば、ソフトクローザータイプの引き戸を設置することでケガなどのリスクを軽減できます。
②空間を広く使える
デッドスペースが少なく、部屋を広く使えるのも引き戸のメリットです。
開き戸は開閉時に扉が扇状に広がる空間が必要となり、その部分を別の目的に使用することができないのが難点です。
しかし引き戸なら、扉を左右にスライドさせるだけなので、扉を開閉するスペースは不要です。
扉の可動域が空間の邪魔をしないので、部屋の出入り口付近にも家具を置けるなどレイアウトの幅も広がります。引き戸は限られたスペースを有効活用したい方にもおすすめです。
③開放感を演出できる
引き戸は空間に開放感をもたらすのにも適しています。
開けっぱなしにしておけば部屋全体が広く感じられるだけでなく、空間が一体化し、広々と使えます。
リラックスできる開放的な住まいを実現したい方や、家の一部を開放してコミュニケーションの場として活用したい方にもおすすめです。
一方、集中したいときは扉を閉めて個室にすることも可能。外部からの干渉を防いで静かな環境をつくれるので、家族間のプライバシーを確保できる住まいづくりが叶います。
④通風を確保できる
換気をする際、開き戸は風で扉が閉まるため、ストッパーで固定しなければなりません。
引き戸ならストッパー不要で、換気をスムーズにできます。
また、窓と同じように開口部の幅を調整しやすいので通風量や換気量の変更も簡単です。
玄関に設置する引き戸には、内側に網戸を設置できるタイプもあります。
住まい全体の換気をスムーズにしやすくなるので、引き戸のリフォームを考えている方は検討してみるとよいでしょう。
引き戸にリフォームするデメリット
引き戸には多くのメリットがある一方、デメリットがあることも覚えておきたいところです。
ここでは、引き戸にリフォームをした場合に考えられるデメリットを、3つご紹介していきます。
①気密性や遮音性が低くなる
引き戸は開き戸と比べて上下に隙間ができやすく、気密性が劣るのが難点です。
部屋の気密性が低いと冷暖房の効きが悪くなり、光熱費が割高になりやすいのもデメリットといえるでしょう。
隙間があるということは遮音性にも影響し、隣の部屋に生活音やテレビの音などが漏れてしまいがちです。
気密性や遮音性を兼ね揃えた引き戸もなかにはありますが、気密性や遮音性の高さを重視するなら開き戸を選ぶほうが無難でしょう。
②扉を引き込むスペースが必要
引き戸は横にスライドして開け閉めするため、扉1枚分の引き込みスペースが必要になります。
引き込むスペースを確保できない場合、引き戸を設置できない場合もあるため注意が必要です。
引き込みスペースを確保できない場合の解決策として、引き込み戸を選ぶのも一つです。
壁の内部に扉を収納できるので、空間を広く取れるだけでなく、見た目がすっきりとして開放感も生まれます。
③開閉音がしやすい
引き戸は、開き戸より扉を開け閉めする際の音が気になりやすい傾向があります。
扉を開けたときの「ガラガラ、キュルキュル」といったレール音や、引き戸を閉めるときの「バタン」といった戸あたり音が気になってしまうこともあるかもしれません。
昼間であれば仕方がない気もしますが、夜間や早朝に隣の部屋の引き戸の開閉音が壁に響き、それがストレスになってしまう可能性もります。
引き戸のリフォームをする際は、こういったデメリットがあることも理解した上で検討するとよいでしょう。
用途によって使い分けたい引き戸の種類
一口に引き戸といってもたくさんの種類があります。用途に合わせて選ぶことで、引き戸のメリットを活かした快適な暮らしを実現できます。
ここでは、引き戸を種類別に分けて、それぞれの特徴についてご紹介していきます。
片引き戸
片引き戸は、片側方向にスライドさせて開閉するタイプの引き戸です。
通常、1枚扉が多いですが、2枚や3枚の連動タイプもあります。
片引き戸は、構造と見た目がシンプルで使いやすいのに加えて、スペースを有効活用する際にも大変便利です。
複数の戸を連動させることで広いスペースを区切ったり、開放感を演出したりと、目的によって柔軟に対応できます。
動かせない壁ではなく、用途に合わせて動かせる片引き戸を設置するのもおすすめです。
引き違い戸
引き違い戸は、扉を片側だけでなく両側にスライドして開閉するタイプの引き戸で、押入れの戸によく見られます。
扉の両側の壁を有効活用できるのに加え、左右どちらからも行き来ができるため、動線がスムーズな住まいづくりに適しています。
開放感を出したいときには両側を全開にすればひと繋がりの広い空間をつくることも可能です。
動線を確保しつつ、利便性にも優れた扉をお探しの方におすすめです。
引き込み戸
引き込み戸は、扉を開けたときに壁の内部に引き込めるタイプの引き戸です。
扉を開いているときに壁内に収納できるので、見た目がすっきりとして部屋の開放感がアップします。
リビングとダイニングの間に引き込み戸を設置するのもおすすめです。
必要なときには間仕切りとして利用し、開放感を出したいときには扉を壁内に収納してひとつの空間をつくることが可能になります。
引き分け戸
引き分け戸は、左右2枚の扉を両側にスライドさせて開閉するタイプの引き戸です。
両側の扉を開くことができるので、開口部を比較的大きく取れ、大きな荷物の出し入れなどが楽にできます。
部屋の間仕切りやアクセントとして使われることも多くあります。
リビングとダイニングの仕切りに引き分け戸を設置し、空間を分けたり、扉を開けて開放感を出したりと、用途に応じてさまざまな使い分けが可能です。
折れ戸
折れ戸は、開けたときに扉を折りたためるタイプです。
狭小な場所や戸袋を設けることができない場所に使われることが多く、トイレやバスルームなどによく利用されています。
扉を開けたときに中に折り畳まれるので、開閉するためのスペースが不要になるのに加え、扉が通行の邪魔をすることがありません。
出入り口や通路に干渉しづらい扉を設置したい場合や、限られたスペースを有効活用したいときにもおすすめです。
2タイプある引き戸の設置方法
引き戸の設置方法には、床にレールを設置する「レールタイプ」と、扉を上から吊る「上吊りタイプ」の大きく2種類があります。
それぞれの特徴について以下で解説します。
レールタイプ
レールタイプは、床にレールを設置する方法です。床に敷いたレール上をスライドさせて、扉を開閉させます。
ごく一般的な引き戸ではレールタイプの設置方法が使われています。押入れや襖などに用いる引き戸の多くもレールタイプです。
上吊りタイプ
上吊りタイプは、上部に設置したレールに扉を吊るしてスライドさせる方法です。
床にレールを設置しないため段差が生じず、転倒によるケガの予防につながります。
小さな子どもや高齢者の転倒予防はもちろん、車椅子でスムーズに移動できるようになります。
また、床のレールにゴミやホコリが溜まることがないのもメリットです。
お掃除が楽にでき、衛生的な住まいを保てるでしょう。
引き戸にリフォームする費用
引き戸にリフォームしたいと思ったとき、どのくらい費用がかかるのか気になりますよね。
引き戸のリフォーム費用は、設備のグレードや規模などによって差があります。
たとえば、室内やクローゼットの扉を引き戸にリフォームする場合、費用相場は約20~30万円です。
もし、バリアフリーに対応しているものや気密性に優れている引き戸を設置するとなれば、約20~50万円になるケースもあります。
玄関扉を引き戸にリフォームする場合の費用相場は約30〜40万円ですが、規模によっては100万円程度かかることもあります。
玄関扉は室内扉と違って防犯面を考慮してつくられているので本体価格が高く、それに伴ってリフォーム費用が高額になりがちです。
片引き戸に変更する場合、既存の玄関枠をそのまま活用できれば費用を抑えられますが、壁や間口の工事が必要ならばリフォーム費用は約50万円〜が目安です。
引き戸のリフォームで使える補助金制度
引き戸のリフォームは、バリアフリー化や省エネ対策として非常に有効です。
特に高齢者や子育て世帯にとって、引き戸は出入りが楽で空間を広く使える利点があります。
こうしたリフォームを実施する際、利用できる補助金制度がいくつかあります。
ここでは、引き戸リフォームに関連する主な補助金制度についてご紹介します。
介護保険の高齢者住宅改修費用助成制度
引き戸へのリフォームをバリアフリー化の一環として考えている場合、介護保険の高齢者住宅改修費用助成制度を利用することができます。
この制度は、要介護認定を受けた高齢者が住む住宅の改修費用の一部を補助するものです。
補助金額は最大で18万円まで支給されます。
申請条件として、要介護認定を受けた高齢者が住む住宅であることが求められます。
引き戸は開閉が楽で動線をスムーズにするため、高齢者の自立支援や介護の負担軽減に役立ちます。
手続きについては、市区町村の福祉担当窓口で詳しい情報を確認してください。
子育てエコホーム支援事業
子育て世帯向けに提供されている「子育てエコホーム支援事業」も引き戸リフォームに利用できる可能性があります。
この制度は、子育て世帯がエコ住宅にリフォームする際の費用を一部補助するものです。
補助金額は条件により異なりますが、最大20~60万円まで支給されます。
申請条件として、18歳未満の子どもがいる世帯であることが求められます。
引き戸の設置により、空間を広く使えるようになるため、子どもたちの安全な移動や遊びのスペースを確保するのに役立ちます。
子育てエコホーム支援事業については、こちらをご覧ください。
次世代省エネ建材の実証支援事業
次世代省エネ建材の実証支援事業は、省エネ性能の高い建材を使用したリフォームに対して補助金を支給する制度です。
引き戸を含む玄玄関ドアのリフォームで省エネ効果が期待できる場合、この支援を受けることができます。
補助金額は経費の2分の1の金額です。
申請条件として、省エネ性能が一定基準を満たす建材を使用することが求められます。
引き戸を導入することで、室内の通風を改善し、冷暖房効率を高める効果が期待できます。
詳細は下記ホームページで確認できます。
地方自治体の補助金
各地方自治体でも、独自の補助金制度を設けている場合があります。
引き戸リフォームに関する補助金を提供している自治体も多いため、お住まいの地域の自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
補助金額や申請条件は自治体によって異なります。具体的な情報は各自治体の公式サイトや窓口で確認してください。
下記は広島市における高齢者等住宅改修費補助のホームページです。
引き戸を有効活用するアイデア集
最後に、引き戸を有効活用するリフォームアイデアを5つご紹介します。
以下の実例を参考にしながら、理想の住まいをイメージしつつ、暮らしにフィットした引き戸のリフォームを見つけてみてくださいね。
引き戸のリビング扉で空間を有効活用
ご両親との同居に伴い、老朽化した住まいをリフォームにて一新。リビングの扉を引き戸に変更して空間を広く使えるようにしたことで、開放感が増し、家族が自然と集まる居心地のよいリビングが完成しました。広さがあるので家族同士の適度な距離も保てます。
引き戸は出入りのしやすさなど利便性にも優れているので、将来を見据えた安心・快適な住まいづくりにも役立ちます。世代の異なる家族が一つ屋根の下で暮らす二世帯住宅にもぴったりです。
2枚の引き違い戸を空間のアクセントに
インテリアに合わせたデザインの引き戸に変更すれば、内装に統一感が生まれ、空間をおしゃれにセンスよく見せることができます。
ブルーの引き違い戸が空間のアクセントになっているこちらの住まいでは、リビングとダイニングの間に連動タイプの引き戸を採用。扉を開けておけば空間を広く取れ、閉めればプライバシーを確保できるなど空間を有効活用できます。採光性の高い引き戸を採用しているため室内が明るく、部屋の圧迫感も減らせます。
トイレを引き戸にして介護をラクに
お母様の介護をきっかけに実家をバリアフリーの二世帯住宅へとリフォーム。トイレの扉を引き戸にすることで、介助しやすいように工夫しました。
介護が必要な場合、トイレに介助スペースを確保しなければなりませんが、間取り自体を広げるのが難しいこともあります。その場合、トイレの扉を引き戸にすれば開口部を広く取ることが可能です。扉を全開にすれば、たとえ狭いスペースであっても介助しやすい状態をつくることができます。
木の連続扉でナチュラルに
築35年のマンションを、リフォームで木のぬくもりに包まれたナチュラルな空間へ一新。LDKに隣接する洋室には3連の片引き戸を2箇所設置して部屋同士を区切っています。
部屋の統一感を演出するために、木製の引き戸を採用。無機質になりがちなマンション内部にぬくもりがプラスされました。引き戸を開放すればLDKを広く使えて、閉めれば集中できる個室に変化するなど、用途に合わせて自在に空間を仕切れます。
洋室にも和室にも馴染む引き戸で開放感を演出
ご両親と息子様ご家族の二世帯住宅を、お子様の成長に伴い、家族揃って気持ちよく暮らせる同居空間へとリフォームしました。LDKと畳コーナーを引き戸で区切ることで空間を有効活用。扉を開放すれば空間に開放感が生まれ、自然と家族が集う住まいづくりが叶います。
襖のように左右どちらにも開け閉めできる引き戸は和洋問わず幅広い空間にフィットするため、現代の暮らしにも自然と馴染みます。
引き戸のリフォームで家族が安心して暮らせる家に
引き戸は誰でも開け閉めしやすく、動線をよくしてくれます。壁の代わりに引き戸を使うと用途に合わせて空間を自在に有効活用できるのもメリットです。利便性に優れた引き戸にリフォームすれば、暮らしやすい住まいを実現できるでしょう。バリアフリーに配慮した住まいや開放的な空間を実現したい方にもおすすめです。
引き戸のリフォームをお考えの方は、お気軽に山根木材までご相談ください。お客様のご要望とライフスタイルに合わせた最適なプランをご提案いたします。
今なら「リフォームまるわかり大辞典」を無料進呈中です。お問い合わせ・資料請求は、下記お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
※弊社では、広島県内を施工エリアとさせていただいています。