能登半島地震や熊本地震など大きな地震被害が後を絶たず、自宅の耐震性が気になっている方も多いのではないでしょうか。
いつ来るかわからない地震に備え、安心安全に暮らすためにおすすめなのが耐震診断です。
耐震診断を受ければ自宅の耐震性や耐震リフォームの必要性がわかります。
今回は、耐震診断とは具体的に何なのか、どこに頼めば良いのかを解説します。
費用相場や今すぐできるセルフチェックも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
耐震診断とは~地震に強い家にするために
耐震診断とは、建物の耐震性を調べ、地震の揺れに耐えるだけの強度があるかを確認することです。
具体的には対象となる建物の構造強度を調べ、震度6強〜7程度の地震でどの程度の被害が出るかを計算します。
これにより地震が起きた場合の被害を数値で確認でき、必要性があれば耐震性を強化する工事をおこないます。
建物の安全性を高め、地震による倒壊や損壊を防ぐため、耐震診断は非常に重要です。
法律によって耐震性の向上が進められている
建物の耐震性の向上は国も重視しており、実際に耐震性を高めるための法整備も進められてきました。
1995年の阪神淡路大震災では6,400人以上の方が犠牲となり、その8割が倒壊した建物に圧迫されて亡くなっています。
特に、1981年に新耐震基準が施行されるよりも前に建てられた建物での被害が多くを占めていました。
そこで2000年に施行された現行の耐震基準では、以下のように細かい構造計算に基づく基準を満たすことが求められるようになりました。
- 一次設計では、建物の主要構造部に使われる柱や梁が中程度の地震に耐えられるよう、計算しなければいけない
- 二次設計では、大地震で建物が倒壊・崩落しないよう、建物の構造や規模など3つの観点から強度を計算しなければならない
さらに、既存の建物の耐震性向上を求める「耐震改修促進法」も施行されました。
この法律は施行後も改正を繰り返しており、例えば学校、病院、百貨店など、多くの人が集まる建築物のうち、一定の条件に該当する場合、耐震診断の実施が義務付けられています。
一般住宅は個人が判断する必要がある
先述の通り、一部建物には「耐震改修促進法」により耐震診断が義務付けられていますが、一般住宅については耐震診断や改修補強工事は努力義務とされています。
したがって、耐震診断や改修補強工事で耐震性を高めることが望ましいとは言いつつ、法的な拘束力があるわけではありません。
しかし、地震が起きて建物が倒壊・損壊した時に被害を受けるのは、その住宅の住人自身です。
もしもの時に備え、個々人で耐震診断や改修補強工事の必要性をしっかり判断することが重要です。
耐震診断は誰に頼むべき?
耐震診断は民間企業や一般社団法人など、さまざまな団体が実施しています。
また、建築士などの専門家の場合は「耐震技術認定者」の資格を持つ人が耐震診断をおこなえます。
なお、家の住人自身でも、簡単な耐震性のチェックなら可能です。
しかし、詳細な耐震診断には専門的な知識と経験が必要で、例えば木造住宅の耐震診断では、日本建築防災協会が発行する「木造住宅の耐震診断と補強」の方針に従う必要があります。
耐震性に不安がある場合は、セルフチェックだけで済ませるのではなく、専門家に診断を依頼することを検討してみましょう。
なお、山根木材には住宅診断のプロである住宅医が在籍しております。お住まいの安全性を確認したい場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
耐震診断の種類
耐震診断は、ごく簡単なものであればセルフチェックも可能です。
専門家による詳細な耐震診断になると、一般診断や精密診断があります。
まずはセルフチェックから始め、気になる点があれば専門家による診断につなげると良いでしょう。
セルフチェック、一般診断、精密診断について解説します。
セルフチェック
自宅の耐震性は気になるけれど、いきなり専門家に依頼するのはハードルが高い、という場合は、まずセルフチェックをしてみましょう。
その際参考になるのが、国土交通省住宅局監修で、一般財団法人日本建築防災協会が編集した『誰でもできる我が家の耐震診断』です。
10個の質問項目が設定されており、それに答えていくことで簡単な耐震診断ができます。
例えば住宅を建てたのはいつか、今まで大きな災害に見舞われたことはあるかなど、質問項目は簡単なものがほとんどです。
質問項目に答えるごとに説明が表示されたり、木造住宅の補強方法も確認できたりと耐震知識の習得にもつながるため、ぜひ活用してみてください。
一般診断
一般診断は専門家がおこなうもので、「耐震改修などの必要性の判定」を目的とした耐震診断です。
一般診断は、結果を受けてただちに改修補強工事をするというものではありません。
一般診断で問題が見つかった場合は、精密診断でさらなる詳細を確認するという流れが一般的です。
一般診断では、原則として内装材や外装材を剥がすことはありません。
そのため、比較的手軽に実施しやすい点が特徴です。
一般診断をおこなうのは、建築士などの建築関係者で、建築に関する知識や経験のある人とされます。
精密診断
精密診断とは、改修の必要性が高い物件を対象に、一般診断よりもさらに詳細な診断をするものです。
一般診断で改修の必要性があると判断された場合に、精密診断でさらに詳しく調査をし、改修の必要性を最終的に判断するのです。
精密診断の結果、改修することになった場合は、改修後の耐震性も診断してもらえます。
精密診断では壁を一部解体して天井や壁の内部まで調査します。
解体した箇所の復旧工事も必要になるため、一般診断に比べて診断費用は高額になりがちです。
精密審査をおこなうのは建築士などの専門家です。
ただし、専門家であれば誰でも良いというわけではなく、詳細な調査をおこなえるだけの高度な知識と経験が求められます。
耐震診断の基準
耐震診断の一般診断・精密診断では、木造住宅の耐震性を「上部構造評点(lw)」という数値で表します。
「上部構造」とは建物の基礎より上の部分のことです。
上部構造評点は震度6の揺れを想定して算出され、数値ごとの耐震性は以下のとおりです。
上部構造評点 | 判定 |
1.5以上 | 倒壊しない |
1.0以上~1.5未満 | 一応倒壊しない |
0.7以上~1.0未満 | 倒壊する可能性がある |
0.7未満 | 倒壊する可能性が高い |
耐震診断の結果、上部構造評点が1.0以上であれば、耐震性があると判断されます。
一方、上部構造評点が1.0未満だった場合は、地震時に倒壊することが考えられるため耐震性の強化が必要だとされます。
なお、耐震性を表す時によく使われる「耐震等級」は、上部構造評点とは別物です。
耐震等級は建物の耐震性を3段階の等級で表したもので、最高ランクの3級は上部構造評点1.5以上に当たります。
上部構造評点のほうが、耐震等級よりも建物の耐震性をさらに細かく評価したものといえます。
耐震診断にかかる所要時間
耐震診断にかかる所要時間は、一般診断なら約2時間、精密診断なら解体した壁などの復旧工事の程度にもよりますが、おおむね半日〜1日程度です。
なお、一般診断では専門家が自宅に訪れ、耐震性を診断していきます。
精密診断のように壁の解体はしないものの、できるだけ床下や天井裏に入り、以下のような多岐にわたる項目をチェックします。
- 間取り
- 壁の材質
- 筋かいの有無
- 屋根の重さ
- 基礎のヒビ割れ・外壁の割れ・雨染みといった劣化の状況
耐震診断の費用
耐震診断の費用は、木造住宅の一般診断であれば1棟12万〜25万円程度が標準的です。
ただし、建築当時の設計図はあるか、建物の形状はどうか、築年数はどれくらいかなどにより費用は変動します。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物の一般診断費用は、現地調査費用も含めて次のとおりです。
- 鉄筋コンクリート造:500円/㎡~2,000円/㎡
- 鉄骨造:1,700円/㎡~2,400円/㎡
耐震診断の補助金
先述の通り耐震診断には費用がかかります。
一般診断から精密診断に進む場合はさらに費用がかかりますが、実はこうした耐震診断の費用をまかなえる補助金もあります。
耐震診断の補助金制度や融資制度は国の制度を基盤としつつ、各自治体がおこなっていることが多いです。
例えば広島県広島市では、「木造住宅耐震化促進支援事業」により、条件を満たす建物の耐震診断費用が100万円を上限として80%まで補助されます。
補助金の対象や金額は自治体ごとに異なります。
また、補助金を得るには「耐震改修促進法」における「認定」が必要など条件が設けられているため、詳しくはお住まいの自治体の窓口に問い合わせてみてください。
耐震診断を受けたほうが良い家のポイント
専門家による耐震診断では費用も時間もかかるため、受けようか迷う方も多いでしょう。
目安として、以下の点に該当する場合は、耐震診断を受けたほうが良いといえます。
- 1981年6月以前に建てられている
- 老朽化や劣化が気になるところがある
- 建物が複雑な形をしている
それぞれについて詳しく解説します。
1981年6月以前に建てられている
建物が1981年6月以前に建てられている場合は、耐震診断を受けたほうが良いです。
建築基準法の改正により耐震基準が強化されたのは1981年6月であり、それ以前に建てられた建物は耐震性が低いことが多いからです。
なお、2000年以降は建物を建てる前に地盤調査をすることが事実上義務化されています。
地盤の安全性が確認されたうえで建物が建てられているため、2000年以降の家なら耐震性が確保されている可能性が高いです。
老朽化や劣化が気になるところがある
以下のような点に該当し、老朽化や劣化が気になるところがある場合も、耐震診断を受けることがおすすめです。
- 過去に大きな災害に遭ったことがある
- 過去に劣化が進み、その都度修繕してきている
- シロアリ被害がある
もともとは耐震性が高い家でも、老朽化や劣化が進むと該当部分が弱くなり、地震の揺れに耐えにくくなっている場合があります。
建築当初の耐震性がいつまでも続くわけではないことも念頭に置き、耐震診断を検討してみましょう。
建物が複雑な形をしている
建物が複雑な形をしている場合も、耐震診断で耐震性を確認しておくと安心です。
複雑な形をしている建物とは、具体的に以下のようなものを指します。
- 1階よりも2階のほうが大きい
- 1階と2階の壁面の位置が合っていない
- 1階に大きな吹き抜けがあり壁が少ない
一般的に、建物は正方形や長方形に近いほうが安定性があり、揺れにも耐えやすいとされます。
よって、もともと複雑な形をしていたり増改築で複雑な形になったりしている建物は、一度耐震診断を受け、改修の必要性を確認しておいたほうが良いでしょう。
耐震性はリフォームで高められる
耐震診断を受けて家の耐震性が低いとわかったとしても、引っ越さなければならないわけではありません。
リフォームで耐震性を高めることで、住み慣れた家でより安心して暮らせるようになります。
耐震リフォームとは、文字通り地震の揺れに耐えられるよう、家の強度を高めるリフォームです。
例えば劣化していて強度が落ちていたり、構造的に弱かったりする部分を補強して、地震で揺れても倒壊しない建物にすることを指します。
耐震リフォームをすれば、地震で家が倒壊して自分や家族の命が奪われるリスクや、倒壊により引越しや建て替えを余儀なくされるリスクを下げられます。
地震が起きていない時でも生活の安心感が向上するので、耐震リフォームで地震に備えておきましょう。
耐震リフォームの費用目安
耐震リフォームにかかる費用は、平均で150万〜200万円程度です。
ただし、リフォームの箇所や規模によっても費用は変わります。
ここで、耐震リフォームの工事内容と費用相場を見てみましょう。
工事内容 | 費用相場 |
筋交いの施工 | 1カ所5〜20万円 |
耐震パネルの施工 | 22~65万 |
屋根の軽量化 | 80~150万円 |
基礎の補強 | 50万円~ |
予算がある中で納得のいく耐震リフォームをするためには、信頼のおけるリフォーム会社と工事内容を相談することがポイントです。
また、リフォーム会社によって得意な工事内容や費用設定が違うこともあります。
まずは複数のリフォーム会社に問い合わせてみることもおすすめです。
耐震リフォームの補助金
多くの自治体は、地震による建物の倒壊などの被害を最小限に抑えるべく、先に紹介した耐震診断の補助金だけでなく、耐震リフォーム費用についても補助金制度を実施しています。
自治体ごとに補助金の適用条件や金額は異なりますが、リフォーム費用の5〜8割程度の補助を受けられることが多いです。
補助金をもらうには基本的に、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- リフォーム会社との工事の契約・着工前に耐震診断を受けること
- 事前に自治体に補助金の申請書などを提出し、補助金交付決定を受けること
詳しくは、お住まいの自治体のホームページなどでご確認ください。
なお、耐震リフォームをすると、所得税と固定資産税で減税措置の対象となることもあります。
耐震診断が気になったらできることから始めてみよう
耐震診断は、住まいの耐震性を確認し、耐震リフォームの必要性を検討するために重要なものです。
家の耐震性を考えることは、大切な家族と住まいを地震から守り、安心して暮らすことにつながります。
山根木材では、広島で第一号となる「住宅医」が在籍しており、自社で住宅診断をおこなっております。
診断結果に応じて必要な耐震リフォームのご提案・実施もしておりますので、気になる方はぜひ一度ご相談ください。
※弊社では、広島県内を施工エリアとさせていただいています。