注文住宅を建てる人にとって、避けては通れないイベントの1つが「地鎮祭」です。
かつては必ず実施するものでしたが、最近では地鎮祭を執り行わない人も増えているといいます。
しかしながら、地鎮祭は工事の安全などを土地の神様に祈願する神事であるため、執り行わないで万が一の事態が起きると家族や親族とのトラブルの原因になりかねません。
この記事では地鎮祭とはどのような儀式なのか、執り行う目的や当日の流れ、準備すべき内容について詳しく解説します。
また、地鎮祭を執り行うにあたって気になる費用感や、費用や準備の手間を抑える方法も紹介します。
この記事を読めば、無理なく地鎮祭を執り行い、注文住宅の建築を安心して進められるようになるでしょう。
地鎮祭とは、着工前に執り行う儀式のこと
地鎮祭とは、注文住宅の新築工事着工前に現地で執り行う儀式のことです。
家を建てようとしている土地を守る神様に使用許可をいただくとともに、工事中の安全や建物の安全、そこで生活する家族の繁栄などを祈願する目的で行います。
地鎮祭の成り立ちは諸説あるものの歴史は古く、7世紀後半、持統天皇が藤原京を建設する際に執り行ったと日本書紀に記述されているほどです。
日本人は古くから自然の万物に神が宿っていると信じてきたことから、土地に宿る神を祭る地鎮祭が歴史のある建築儀式となったと考えられます。
現在のように広く普及したのは、江戸時代後期のことといわれています。
地鎮祭と起工式、安全祈願祭、上棟式の違い
建物の建築工事の安全を祈願する行事としては、地鎮祭のほかに「起工式」「安全祈願祭」、さらに「上棟式」があります。それぞれどのような違いがあるのか見ていきましょう。
地鎮祭と起工式の大きな違いは、実施するタイミングです。
地鎮祭が「着工前」に行われるのに対し、起工式は一般的に「着工時」に行われます。
無事に着工まで漕ぎ着けたことに感謝し、工事の安全と円滑な進捗を願うのが起工式の目的です。
ただ、近年では地鎮祭と起工式は同じ意義で使われることも多くなっています。
公共工事などの工事着手時に行われる式典が起工式、個人や一般企業の建築工事着手前・着手時に執り行うのが地鎮祭と区別されるケースが多いようです。
安全祈願祭は地鎮祭と同じ意義の儀式であるものの、通常実際に工事を行う施工者が中心となり、工事中の安全祈願を目的に執り行います。
さらに、「上棟式」は、建物の骨組みが完成した段階で行われる儀式です。
上棟式は、木造建築において棟上げ(建物の骨組みの頂点を仕上げる作業)を祝う行事であり、これまでの工事の無事に感謝し、引き続き安全な工事を祈願します。
上棟式は地鎮祭や起工式と異なり、特に建物の構造に関連する大事な節目として重視されることが多いです。
起工式や上棟式については、こちらの記事をご覧ください。
地鎮祭は必ず執り行うべき?
建築工事の際は、必ず地鎮祭を執り行わなければならないのでしょうか。
結論からいうと、地鎮祭をやるかやらないかは基本的に施主の判断次第であり、実施する義務があるわけではありません。
ひと昔前は注文住宅の着工前に、地鎮祭は必ず行うものでした。
しかし最近では、時代の流れもあり地鎮祭を執り行わないケースも増えています。
実施するかどうか迷った際は施工会社と相談し、簡略化した地鎮祭を行うケースもみられます。
地鎮祭を行わない選択肢も取れますが、工事中に万が一のことが起きたとき、家族や親族から「地鎮祭をやらなかったからだ」と言われることも想定されるでしょう。
最終的には施主の判断ですが、地鎮祭については事前に両親をはじめとした親族に相談しておくと安心です。
建設予定地が遠方にある、工期との兼ね合いで日程の折り合いがつかないなどやむを得ない事情がある場合は、簡易的な行事で地鎮祭に代えるという方法もあります。
仏教やキリスト教の場合、地鎮祭はどうする?
地鎮祭は神式で行われるものであるため、仏教やキリスト教を信じる人には抵抗があるかもしれません。神道以外の宗教では、地鎮祭をどのように行うのでしょうか。
キリスト教の場合、日本古来の「土地の神様」という概念がないため、地鎮祭ではなく「起工式」の形で儀式を執り行います。
牧師または神父に依頼して行いますが、決まった形式は特にありません。
仏式の地鎮祭では、土地の神様ではなくご先祖様にお祈りする形を取り、工事中の安全祈願を行います。
仏式では自身の菩提寺に依頼するのが基本です。
ただし、寺によっては地鎮祭に対応していないところもあるため、事前に確認しておきましょう。
地鎮祭の流れ
ここでは地鎮祭当日の実際の流れを見ていきます。
地鎮祭は大きく10の儀式で構成され、所要時間は20〜30分程度が一般的です。
準備や片付けも含めればもっと多くの時間がかかりますが、地鎮祭自体はそれほど時間はかかりません。
以下に地鎮祭を構成する10の儀式を説明しますが、当日の段取りや進行は基本的に施工業者が行うもの。
施主が流れを詳しく把握しておく必要はありません。
ただ、10の儀式のうち「四方祓いの儀(しほうはらいのぎ)」「地鎮の儀(じちんのぎ)」「玉串拝礼(たまぐしはいれい)」「直会(なおらい)」の4つに関しては、施主もやることがあるので覚えておきましょう。
ここで紹介するのは一例であり、地域によって風習や呼び方が異なる場合があります。
1.修祓(しゅばつ)
地鎮祭に参列した人やお供え物、儀式を行うための祭壇をお祓いして清める儀式です。
神主がお祓いの言葉を奏上し、大麻(おおぬさ)と呼ばれる白い帯のついた串を左右に振って清めます。
2.降神の儀(こうしんのぎ)
読んで字のごとく、土地の神様や地域の神様をお迎えする儀式です。
神主が声を出すと、祭壇に設置された神籬(ひもろぎ)に神様が降臨するとされています。
神籬とは、榊に紙垂(しで)や鏡などをつけた神様の依代(よりしろ)となるものです。
参列者は頭を下げながら、神様が降りてくるのをお待ちします。
3.献饌(けんせん)
祭壇のお供え物(神饌)を神様に召し上がっていただく儀式です。
お神酒と水の蓋を取り、お供え物を神様に捧げます。地鎮祭の規模によってお供え物の量も変わりますが、お神酒・水のほかに米・乾物・野菜・果物・塩などを用意するのが基本です。
四季折々の新鮮な食材を準備するのが良いとされます。
4.祝詞奏上(のりとそうじょう)
「この土地を利用して家を新築する」旨を神様に奉告し、土地を使うことの許可をいただく儀式です。
紙に記された祝詞を神主が読み上げて神様へ捧げます。
このとき読み上げられるのは、神様に対する施主・設計者・施工会社の紹介、工事中の安全祈願といった内容です。
5.四方祓いの儀(しほうはらいのぎ)
神主が土地の四隅と中央を周って、お祓いを行うとともにお神酒・米・塩などをまいて清めます。
「切麻(きりぬさ)」「散米」とも呼ばれ、施主も神主に同行するのが一般的です。神主と施主以外の参列者は着席のままその場で待ちます。
6.地鎮の儀(じちんのぎ)
神様に対し、施主と施工会社が着工することを奉告する儀式です。
祭壇の横に盛られた円錐形の砂山を順番に崩しながら進行します。
最初、盛砂の頂上には草が立てられた状態。神主以外は「エイ、エイ、エイ」と声を出しながら、次の順番で3回ずつ動作を繰り返します。
- 刈初の儀(かりぞめのぎ)
設計者が斎鎌(いみかま)で3回盛砂の草を刈る動作を行い、抜いた草を下に置く - 穿初の儀(うがちぞめのぎ)
施主が斎鍬(いみくわ)で3回盛砂を崩して穴をつくる - 開いた穴に神主が鎮め物(しずめもの)を納める
- 堀初の儀(ほりぞめのぎ)
施工者が斎鋤(いみすき)で3回盛砂を均して、鎮め物に砂を被せる
施主は、2番目の穿初の儀を行う必要があります。
7.玉串拝礼(たまぐしはいれい)
参列者が神様に玉串を捧げて工事の安全を祈願する儀式です。
関係者が一人ずつ順番に祭壇の前へ進み、玉串を時計回りに回して捧げ、神道の作法である2礼・2拍手・1礼を行って後ろへ下がります。
玉串を捧げる順番は「施主→施主の関係者→施工会社の関係者」というのが一般的です。
8.徹饌(てっせん)
献饌でお供えした神饌を下げる儀式です。
献饌と逆の動作をするもので、お神酒・水の入った器に蓋をして下げます。
お供え物を下げる際には、最後にお供えしたものから順番に下げていきます。
9.昇神の儀(しょうしんのぎ)
降臨された神様に再び戻っていただくための儀式です。
神主が昇神詞と呼ばれる言葉を唱え、神籬を依代としてお迎えした神様がお戻りになるのを待ちます。
10.直会(なおらい)
神様がお戻りになられたあと、お供えしていたお神酒や神饌を神主と参列者でいただく儀式です。
そのまま参列者による歓談へ移ることもありますが、近年では施主が挨拶し、神主が音頭を取って乾杯。
参列者がお神酒の入った盃に口を触れて終了というケースが多くなっています。
施主は参列者へのお礼を述べるとともに、着工できる喜びと工事の安全祈願を述べるというのが主流です。
地鎮祭の前日までにやるべきこと
地鎮祭を執り行うにあたっては事前の準備も必要です。
以下では、地鎮祭の前日までにやるべきことを1ヶ月前、1週間前に分けて解説します。
【1ヶ月前】地鎮祭の日時を決める
地鎮祭は工事着工前に執り行う必要があるため、施工会社と相談のうえ1ヶ月くらい前には日時を決定します。
地鎮祭は縁起が良い日に実施するのがベストといわれ、六曜における大安や友引、先勝の午前中、先負の午後に行うのが一般的です。
加えて、たとえ大安であっても、二十四節気に基づく「三隣亡(さんりんぼう)」と呼ばれる日は避けたほうが良いとされます。
【1ヶ月前】神社に地鎮祭の予約をする
日程が決まったら神社に地鎮祭の予約をしましょう。
通常は住宅を建てる地域の氏神様や地方の名のある神社などに依頼します。
もしどの神社に依頼すればよいかわからない場合には、建設地の自治会長に尋ねるのがおすすめです。
依頼する神社が決定したら施工会社に報告します。
報告後の手配は施工会社が引き受けてくれるのが一般的です。
ハウスメーカーや工務店によっては、地鎮祭の手配を一括して行ってくれるところもあります。
【1週間前】地鎮祭の参列者の人数を確定する
地鎮祭の参列者は神主のほか、施主や工事関係者、設計者などです。
同居していない両親や親族などを呼ぶことも可能ですが、1週間前までには参列者数を確定しておきましょう。
施工会社が神社とやり取りしている場合は、少し期間に余裕を持って施工会社へ人数を伝えます。
施主が神社と直接やり取りしている場合、施工会社の参列者数や施工者・設計者の氏名、肩書きなども併せて伝える必要があります。
これは、祝詞奏上で施主・設計者・施工会社の紹介が読み上げられるためです。
【1週間前】祭壇に供えるお神酒を用意する
地鎮祭では祭壇にお神酒を供えますが、この日本酒を「奉献酒」といいます。
奉献酒の形式は地域によって異なるものの、一升瓶1本もしくは一升瓶2本箱が主流です。
「奉献」(奉納でも可)と書かれたのし紙を巻いた日本酒を用意します。
奉献酒に関するマナーは酒屋が熟知しているので、購入時に「地鎮祭用」と伝えれば正しい形で用意してくれるでしょう。
奉献酒は施工会社が用意するケースもありますが、施主側で用意しても問題ありません。誰が用意するのか事前に確認しておきましょう。
【1週間前】近所への挨拶回り用の粗品を用意する
地鎮祭の終了後、建設地の近所に住む人へ挨拶回りをするのが一般的です。
これから建築工事が始まること、騒音や振動などでご迷惑をおかけする可能性があることを事前に伝えるのが目的です。
挨拶する範囲は「両隣2軒、向かい3軒、裏3軒」といわれます。
持参する粗品には紅白の蝶結び水引があるのし紙をかけ、表書きに「ご挨拶」もしくは「粗品」と記載。下段には施主の名字を記します。
粗品の相場は、通常500〜1,000円ほどで高すぎないようにしましょう。
渡すのはタオルや石けんなど誰がもらっても使える日用品で、使えば手元に残らない、いわゆる「消えもの」が適しています。
地鎮祭当日の準備品
地鎮祭当日、現場の運営は施工会社の担当者が手配してくれるのが一般的で、施主がすべての物を準備する必要はないケースがほとんどです。
ただし、初穂料(玉串料)は施主が直接持参するのが基本です。
初穂料(玉串料)とは、地鎮祭を依頼した神主・神職に渡す謝礼のことです。
必要に応じて奉献酒も施主の持参となるケースがあります。
地鎮祭でかかる費用
地鎮祭でかかる費用の項目とそれぞれの目安は以下のとおりです。
項目 | 費用 |
初穂料(玉串料) | 3〜5万円程度 |
神主の車代 | 5,000〜1万円程度 |
祭壇等の準備費(施工会社への支払い) | 1〜5万円程度 |
近所への挨拶回りの粗品代 | 5,000〜1万円程度 |
奉献酒 | 2,000〜5,000円程度 |
上記からわかるとおり、地鎮祭の費用で大きいのが神主・神職へ支払う初穂料(玉串料)です。
3万円・5万円といった奇数できりの良い数字にするケースが多くなっています。
初穂料は紅白の蝶結びの水引がついているのし袋に入れ、表書きには「御初穂料」または「御玉串料」と記載します。
施主が個人であれば、のし袋の下段に施主の名字を記入します。
周辺に同じ名字が多い場合には、フルネームで記載したほうがよいでしょう。
他にも表で紹介したような費用が発生するため、場合によってはトータルで15万円程度かかることもあります。
施工会社の準備に関しては、費用感を事前に確認しておくと安心です。
地鎮祭に適した服装の選び方
地鎮祭は、家を建てる際の重要な神事であり、神様に工事の安全を祈願する厳粛な儀式です。
そのため、参列者にはカジュアルすぎる服装ではなく、フォーマルさを感じさせる服装が求められます。
男性、女性、そしてお子さんにそれぞれ適した服装があり、服装選びでは礼儀をわきまえた慎重な配慮が必要です。
ここでは、地鎮祭における各参列者の服装のポイントを紹介し、さらに避けるべき服装についても解説します。
男性の地鎮祭での服装のポイント
男性の場合、地鎮祭にはスーツが最も適しています。
ビジネスシーンで使うシンプルなダークスーツが無難で、ネクタイを着用することでフォーマルな印象が強まります。
ジャケットとパンツの組み合わせも良い選択肢ですが、派手な色やデザインは避け、落ち着いた色味で統一しましょう。
また、足元も重要なポイントであり、革靴を選ぶことでさらに格式が高まります。
カジュアルなスニーカーやサンダルは地鎮祭にはふさわしくありません。
女性の地鎮祭での服装のポイント
女性の地鎮祭での服装は、シンプルかつ上品なスタイルが理想的です。
ワンピースやきれいめのパンツスタイルにジャケットを合わせると、フォーマルさを保ちながら動きやすさも確保できます。
スカートの場合は、短すぎる丈や派手な柄は避け、落ち着いた色合いを選びましょう。
また、アクセサリーは控えめにし、大きすぎるものやカジュアルなものは避けるのが賢明です。
靴に関しても、パンプスやローヒールのシンプルなデザインを選び、サンダルやスニーカーは避けてください。
お子さんの地鎮祭での服装のポイント
お子さんの服装については、年齢によって異なります。
小学生くらいまでの小さなお子さんの場合、比較的カジュアルな普段着でも問題ありませんが、派手な色やキャラクターものの服は避けるべきです。
中学生以上の大きなお子さんは、できるだけ大人と同じようなフォーマルな服装を心がけましょう。
制服がある場合は制服が無難ですが、ない場合でもスーツやきれいめの服装を選び、派手さを抑えた格好が望ましいです。
家族全体で統一感を持たせることも忘れずにしましょう。
地鎮祭にふさわしくない服装とは?
地鎮祭は神聖な場で行われる儀式のため、参列者には適切な服装が求められます。
具体的に避けるべき服装としては、Tシャツやジーンズ、スニーカーといったカジュアルすぎるアイテムが挙げられます。
また、派手な柄や色合い、露出が多い服装も地鎮祭にはふさわしくありません。
特に、季節に応じた服装選びも大切で、夏場でも過度な軽装は避けるべきです。
どの服装においても、シンプルで落ち着いたスタイルを心がけることが、地鎮祭にふさわしい装いと言えるでしょう。
地鎮祭は家づくりの成功をお願いをする大事な儀式!迷ったら施工会社に相談を
以前は注文住宅を新築するにあたり、着工前に地鎮祭を執り行うのが当たり前でした。
しかし、近年では簡略化した形で開催するケースやそもそも地鎮祭を執り行わないケースも増えています。
地鎮祭を行うかどうかは施主の判断次第ですが、家づくりの成功を神様にお願いする大事な神事だということは認識しておきましょう。
地鎮祭をどうするべきか悩んだときは、注文住宅の施工実績が豊富な住宅メーカーに相談するのが得策です。
山根木材ホームは広島・福岡で累積1万棟以上の注文住宅を手がけてきました。
参考までに、山根木材の地鎮祭の様子を動画でご紹介します。
このように豊富な実績をもとに、地鎮祭も含めて施主様をトータルでサポートします。
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