バリアフリー住宅とは、小さな子どもや高齢者、障がいをもった人でも安心・安全・快適に暮らすことができるように配慮された住まいを指します。
住まいのバリアフリー化を考えるうえで配慮すべき点はさまざまありますが、基本は家の中に段差をつくらないことです。
その点、平屋にはもともと階段がないため、バリアフリー住宅に最適なつくりといえるでしょう。
この記事では、平屋のバリアフリー性を高める8つのポイントを解説するとともに、バリアフリーの平屋におすすめの間取りアイデアや注意点を紹介します。
さらに使い勝手が良く、長く安心して暮らせる平屋を建てるために、ぜひ参考にしてください。
平屋のバリアフリー性を高める8つのポイント
平屋のバリアフリー性を高めるために気をつけたいポイントは、主に以下の8つです。
- できるだけ廊下スペースをつくらない
- 高齢者の個室はリビングから離す
- 回遊性のある間取りにする
- 家の中にちょっとした段差や溝をつくらない
- 天井高を確保する
- 大開口窓はできるだけ避ける
- 建材は丈夫さと質感を大事にする
- 玄関ポーチの照明はより明るいものを使う
それぞれ詳しく解説します。
できるだけ廊下スペースをつくらない
平屋は2階建てのように縦に床面積を増やすことができないため、限られた建築面積を有効活用することが大切です。
できるだけ廊下スペースをつくらず、リビングから他の部屋に行き来しやすい間取りを考えましょう。
特にバリアフリー仕様の平屋を建てる際は、車椅子での移動をしっかりとイメージする必要があります。
車椅子に乗って廊下を移動する場合、最低でも90cmの幅が必要です。
さらに歩行者がすれ違うことを考えると、120cm以上の幅を確保しなくてはなりません。
幅広の長い廊下をつくってしまうと他の居住スペースが狭くなってしまうため、できるだけ廊下の少ない間取りを考えてみてください。
また、部屋を仕切る建具にも注意しましょう。
開けたときに一歩下がらなくてはならない開き戸は、車椅子の人にはストレスになります。
建具はなるべく少なくして、必要な場合は引き戸を選ぶことをおすすめします。
高齢者の個室はリビングから離す
廊下を少なくすると、家の中に音が響きやすくなります。
特に家族が集まるリビングでは、夜遅くまで話し声やテレビの音がすることも少なくありません。
この状態が続くと、就寝時間が早い人には毎日の生活がストレスになってしまいます。
バリアフリーの目的は段差を解消することだけでなく、物理的・心理的・身体的な障壁を取り除くことです。
例えば高齢の親など、生活リズムが異なる家族の寝室はなるべくリビングから離れたところに配置しましょう。
なお、高齢者の寝室はトイレからの距離にも配慮が必要です。
高齢になると夜中にトイレで目を覚ます回数が増えるため、寝室の近くにトイレがあると安心できます。
床面積や予算に余裕があれば、寝室近くとは別にもう1ヶ所のトイレをつくっておくとよいでしょう。
回遊性のある間取りにする
車椅子を利用する人や介助者がスムーズに移動できるよう、回遊性のある間取りをつくるようにしましょう。
できるだけ行き止まりをつくらず、リビングや洗面脱衣室、ウォークスルークローゼットなどは二方向からアクセスできるようにすると便利です。
家事の時短につながることはもちろん、朝の身支度をするときの混雑を避けられます。
対面式キッチンを選ぶ場合は、ペニンシュラタイプではなくアイランドタイプを採用するとよいでしょう。
側面が壁に接しているペニンシュラキッチンは一方向からしか出入りができないため、車椅子が方向転換できるだけの広いスペースが必要です。
その点、キッチンをぐるりと一周できるアイランドキッチンなら、配膳や食後の片付けも効率よく行えます。
回遊動線のメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
家の中にちょっとした段差や溝をつくらない
平屋のバリアフリー性を高めるには、室内の建具はすべて引き戸にするのが基本です。
その際、なるべくなら天井付けのレールを使用する上吊りタイプを選ぶようにしてください。
1~2cmほどのわずかな段差や溝でも、高齢者にはつまづき・転倒の原因になります。
上吊りタイプの引き戸にすれば床のレールがなくなるため、安全に移動することができます。
床が完全にフラットになるので、お掃除がしやすいというメリットもあります。
より安全性・快適性を重視する場合は、ソフトクローザーを搭載した引き戸を選ぶことをおすすめします。
ソフトクローザーとは、引き戸の開け閉めをサポートする金具のことです。
ソフトクローザー付きの引き戸は、勢いをつけて閉めても途中から減速してふんわりと閉まるので、小さな子どもが指を挟む心配がありません。
ばねを利用しているため、開けるときにはやや力を使いますが、近年は軽く開けられる製品も登場しています。
ショールームなどで実物に触れ、どのくらいの力が必要なのか確認して選ぶとよいでしょう。
天井高を確保する
バリアフリー住宅では、トイレや洗面所などは車椅子の人と介助者が入れるだけのスペースが必要です。
その分、リビングなどの居住スペースが削られてしまいます。室内に手すりを設置することで狭さを感じることもあります。
圧迫感を解消するには、天井高を確保するのが効果的です。
2階建てとは異なり、天井の高さを比較的自由にできるのは平屋のメリットの一つです。
家族が集まるリビングに屋根の高さを生かした勾配天井を取り入れると、縦の空間に広がりが出るため、開放感が生まれます。
段差をなくして床をフラットにすると室内がのっぺりとした印象にもなりがちですが、天井の形に動きが出ることにより、おしゃれな空間を演出することも可能です。
大開口窓はできるだけ避ける
大開口窓を設置するとリビングは開放的で明るい雰囲気になりますが、高齢になっても住みやすい平屋をつくるのなら、大開口窓は避けたほうがよいでしょう。
「周囲がぼやけて見える」「光が乱反射して眩しすぎる」など人によって症状は異なるものの、80代でほぼ100%の人が白内障を発症するといわれています。
白内障の症状を感じるようになると太陽光がストレスになり、せっかく家族で寛ぐために工夫を凝らしたリビングが居心地の悪い空間になってしまうかもしれません。
また、個室も「明るい南向きが良い」と考えられがちですが、やや太陽光が抑えられる東向きなどのほうが過ごしやすい部屋になります。現在の生活だけでなく将来のことも想定して、採光計画を立てるようにしましょう。
参考:公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット[白内障]」
建材は丈夫さと質感を大事にする
壁や床の建材は、丈夫さと質感の良さを意識して選ぶようにしましょう。
まず壁材は、車椅子がぶつかってもキズがつきにくいものがおすすめです。
具体的には、表面が丈夫でキズがつきにくいビニールクロスや、壁の下半分だけに貼る腰壁パネルなどがあげられます。
床材は車椅子で摩耗するため、表面が柔らかい畳やクッションフロアは避け、フローリングを選ぶことをおすすめします。
フローリングには、複層と単層の2種類があります。
複層フローリングは合板の表面に薄い天然木や木目調のシートなどを貼り合わせたもの、単層フローリングは無垢材でつくられたものです。
無垢材は高価なイメージがありますが、断熱性・調湿性に優れ、天然木ならではの自然の風合いが楽しめるというメリットがあります。
また、ちょっとしたキズやへこみなら、湿らせた布をあててアイロンで熱を加えれば修復できます。
長く使い続けることを考えると、複合フローリングを張り替えるよりもお得かもしれません。
無垢材のメリット・・デメリットについては、こちらをご覧ください。
玄関ポーチの照明はより明るいものを使う
高齢になると、眩しさを感じやすくなると同時に暗さに目が慣れる順応速度も遅くなるため、年齢ごとの変化に合わせて住まいの照明環境も変えていく必要があります。
例えば明るい室内から外に出る際、玄関ポーチが暗いと足元が見えづらく転倒の危険性が高まるため、玄関ポーチの照明はより明るいものを使うようにしましょう。
足元をピンポイントで照らすフットライト(足元灯)を設置するのも効果的です。
玄関まわりだけでなく、室内でも転倒する可能性はあります。
例えば夜中にトイレに行くときなどは、暗がりに目が慣れず戸惑うことも多いので、寝室からトイレに向かう通路にフットライトを取り付けておくと安心です。
バリアフリーの平屋をより快適にする、おすすめの間取りアイデア
平屋のバリアフリー性を高めるポイントを押さえたところで、次にバリアフリーの平屋をより快適にする間取りアイデアとして、以下の3つを紹介します。
- 中庭、テラス
- 小上がり
- 玄関土間
必要に応じて間取りに取り入れてみてはいかがでしょうか。
中庭・テラス
中庭には家全体の採光性や通風性を高める効果が期待できます。
道路に面したオープンな庭とは違い、建物に囲まれているため、人目を気にせず家族でのんびりと寛げることも魅力です。
さらに室内と高さを揃えてテラスを設ければ、車椅子の人や足腰が弱った高齢者も気軽に出入りできる中庭になるでしょう。
わざわざ外出しなくても敷地内で自然の風にあたったり季節を感じたりできるため、気分転換に役立ちます。
小上がり
リビングに十分な広さがある場合、一角に小上がりの和室を備えるのもよいでしょう。
バリアフリー住宅では段差を排除することが基本とお伝えしましたが、特に注意したいのは健康時に気づきにくいわずかな段差です。
床面から30cm以上の高さがある小上がりは腰掛けるのにちょうど良く、足腰に不安がある人にとっては移動中の休憩スペースになります。
座面が畳なので柔らかく、長時間座って寛ぐことも可能です。ただし、車椅子の通路を塞がないよう設置場所には注意しましょう。
玄関土間
玄関土間を広く取っておくと、ベビーカーや三輪車など屋外で使用するアイテムの置き場所に困りません。
車椅子を外出用・室内用で使い分ける場合も、外出用の車椅子は土間に置いたままにできるため便利です。とはいえ、玄関はお客様を迎える場所。
おしゃれなタイルを床材に選ぶと、家の印象がグッと良くなるでしょう。
丈夫で掃除がしやすく、きれいな状態を長く維持できるというメリットもあります。
なお、玄関土間のタイルは、水に濡れても滑りにくい屋外床用を選ぶようにしてください。
平屋のバリアフリー性を高める際に注意すべき点
ここまで、平屋のバリアフリー性を高めるポイントや、より快適にするために取り入れたい間取りなどを紹介しました。
バリアフリーの平屋は身体に障害がある人はもちろん、小さな子どもから高齢者まで住みやすい家であることがご理解いただけたのではないでしょうか。
ここからは、平屋の新築やリフォームでバリアフリー性を高める際に注意すべき点について解説します。
建築費用が高額になりやすい
平屋は2階建てと比べて2階がない分建築費用が安くなりますが、バリアフリー性を高める場合は手すりやスロープなどを設置する費用が加わるため、高額になる場合があります。
建具や水回り設備なども、利便性を追求すると費用はどんどん高くなってしまいます。
間取り、各部屋の広さ、建材や設備など、すべてにおいて優先順位を決め、譲れない点と妥協できる点を明確にしておきましょう。
家族同士のプライバシーを確保する
ワンフロアで生活のすべてが完結する平屋は、家族のコミュニケーションがとりやすい反面、プライバシーの確保が難しい住まいといえます。
特に親世帯の介護などを目的に二世帯同居のバリアフリー平屋を建てる場合は、それぞれの世帯のプライバシーをしっかり確保する必要があるでしょう。
とはいえ、プライバシーを重視するあまり壁を増やしてしまうと、バリアフリーに必要な回遊性のある間取りが実現できません。
親世帯が単身の場合は、疎外感を抱いてしまう可能性もあります。
例えば共用部分となるLDKを中心に、左右に親世帯と子世帯の居住スペースを振り分けるなど、コミュニケーションの取りやすさとプライバシーの確保を両立できる間取りを考えてみましょう。
バリアフリー住宅向けの補助金を活用してお得に平屋を建てよう
バリアフリーの平屋を建てるには高額な建築費用がかかります。
少しでも負担を軽くするため、バリアフリー住宅向けの助成や補助金を積極的に活用するようにしましょう。
例えば新築あるいはリフォームした平屋が「長期優良住宅」に認定された場合、住宅ローン控除をはじめさまざまな税制優遇が受けられるうえ、国から最大200万円の補助金が支給されます(2024年4月現在)。
長期優良住宅のメリット・デメリットについては、こちらをご覧ください。
自治体によっては、住まいのバリアフリー化に独自の補助金制度を設けていることもあるので、これらを利用しない手はありません。
他にもいくつかの補助金・助成金制度がありますが、申し込み要件はそれぞれ異なります。
そのため、各種制度に詳しく、バリアフリー化に精通した施工会社を選ぶと安心です。
広島・東広島・福山でバリアフリーの平屋を検討するなら、山根木材にご相談ください。
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