近年、土壁の魅力が見直されています。天然素材ならではの自然な風合いを持つ土壁は、耐火性が高く調湿性に優れ、夏はひんやり、冬はあたたかく居心地の良い空間を保ってくれる、日本の環境に適した建材です。
この記事では、改めて土壁の魅力やメリット・デメリットを解説するとともに、土壁のお悩みを解消する6つのリフォームアイデアを費用相場も含めてお伝えしていきます。
土壁とは? 砂壁との違い
土壁と混同されやすいものに、砂壁があります。
土壁と砂壁は一見似ているようですが、素材や作り方が異なり、それぞれに違った魅力があります。
土壁とは、土に藁や砂を混ぜて水で練り、塗り固めた壁のことです。
これに対して砂壁は、モルタルや石膏ボードなどの表面に、貝殻・石材・鉱物などを粉砕した色砂と糊液を練り合わせて塗りつけた壁をいいます。
土壁は細い木や竹を下地として使用し、板材のような大きな下地がなくても施工できますが、砂壁には下地材が必要です。
砂壁は土壁よりもきめ細やかな肌合いが特徴であり、上品な雰囲気に仕上がります。
一方、土壁は昔ながらの素朴な風合いが魅力で、落ち着いた空間を作りたいときに適しています。
砂壁リフォームの費用相場やメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
近年見直されている土壁の魅力4つ
土壁は伝統的に日本の住宅に多く利用され、親しまれてきました。
モダンで洋風な住宅が好まれるようになり、新しくつくられることは少なくなっていましたが、近年、日本の気候風土に適した素材として、土壁の価値が見直されています。
ここでは土壁特有の魅力を、4つのポイントごとに紹介します。
魅力①多彩で自然な風合いを楽しめる
あたたかみのある自然な風合いが魅力の土壁ですが、実は仕上がりに多彩な変化をつけられるのも特徴です。
目の覚めるような明るい色から上品で落ち着きのある色まで、色のバリエーションが多く、好みの雰囲気に仕上げられます。
たとえば、土壁の一種である「聚楽壁」は、京都の聚楽第付近でとれる良質な聚楽土を使って仕上げる壁です。
土の個性を感じる肌合いと自然そのものの素朴さが魅力で、格調の高い雰囲気を醸し出せます。
出典:iemiru 日本の伝統的な土壁、聚楽壁(じゅらくへき)の魅力って?
鉄粉や古釘の煮出し汁などを混ぜこんだ「錆壁」もあります。
時間の経過によって鉄粉が錆びることで褐色の斑点が浮かび上がり、独特な雰囲気を味わえるのが魅力です。
魅力②夏はからっとひんやり、冬あたたか。1年を通して快適な湿度を保つ
土壁は見た目の風合いが良いだけでなく、機能性が高いことも魅力です。
特に調湿性能に優れ、部屋の湿度が高い時には空気中の水分を吸収し、部屋が乾燥している時には水分を放出するため、一年を通して理想的な室内湿度を保つことができます。
ジメジメする夏の季節もカラッと過ごしやすく、心地良いひんやり感を味わえます。
室内の湿度調整をしてくれるため、結露対策になるのはもちろん、カビやダニの発生を防ぐこともできます。
また、蓄熱性能にも優れているため、冬でも暖かく快適に過ごせます。まさに高温多湿の日本家屋に適している壁材といえるでしょう。
魅力③化学物質を吸収しシックハウス症候群を防ぐ
土壁はシックハウス対策としてもおすすめです。
土壁には天然素材しか使われていないうえ、シックハウス症候群の原因となる、建材や家具などから発散される化学物質を吸収する作用があります。
土壁の種類によっては、表面に無数の穴が空いている多孔質のものがあります。
多孔質の土壁であるほど、有害物質やにおいを吸収しやすいといった特徴があるのも覚えておきたいところです。
魅力④防火性・耐火性が高い
防火性や耐火性に優れているのも土壁の魅力です。土壁の素材となる土は、火にさらされた際に極めて燃えにくい性質をもちます。
万が一の火災の場合でも土壁自体から燃え広がることはほぼなく、被害を最小限にとどめる効果が期待できます。
土壁を選択することは、住宅の防火対策としても理にかなっているのです。
リフォーム前に知っておきたい土壁のデメリット
土壁には多くのメリットがあります。しかしその一方で、いくつかのデメリットがあることも覚えておきたいところです。
事前に土壁の特性についてきちんと把握しておくことで、後悔のないリフォームを実現できるでしょう。
ここでは、リフォームをする前に押さえておきたい、土壁のデメリットについて解説していきます。
コストがかかる
土壁の施工には高い技術が求められます。土壁の施工に長けた職人に依頼することは、後悔のない土壁リフォームを叶えるためには欠かせません。
また、壁紙を貼り替えるようなリフォームと比較し、人件費や手間賃などが必要となるため、施工にかかる費用が高額になりやすいことも理解しておきたいところです。
土壁のリフォームを検討する際には、できる限りゆとりを持った予算を準備しておくことをおすすめします。
工期が長い
土壁は施工や仕上げだけでなく、解体する際にも高い技術と手間を要します。
そのため、土壁のリフォームはどうしても工期が長くなりやすくなります。
壁紙から壁紙に貼り替えるリフォームであれば基本的に1日程度で施工できますが、土壁や砂壁のリフォームには2~4日程度の工事期間が必要となります。
工期に余裕を持たせたリフォームプランを立てることが大切です。
掃除に手間がかかる
土壁は、やわらかな土の温もりが魅力である一方、硬いものをぶつけるとポロポロと崩れてしまう場合があります。
経年劣化によって表面の土や砂が頻繁に落ちてくることもあり、見栄えが悪くなってしまうケースもあります。
そのまま放置するとカーテンなどに砂が付着し、掃除や洗濯の手間がかかってしまいます。
土壁のリフォームを検討する際には、定期的なメンテナンスが発生することも覚えておきたいところです。
土壁のリフォームアイデア6選!特徴や費用相場について
土壁をきれいな状態で維持しながら快適に暮らすためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。
そこで、劣化した土壁を直したいときの6つのリフォーム方法について、特徴や費用相場なども含めて解説していきます。
現在、土壁の家にお住まいの方はもちろん、これから土壁のリフォームを検討する方もぜひ参考にしてください。
①土壁を塗り直す
経年劣化によって見栄えが悪くなった場合でも、リフォームをすることで土壁特有の風合いや魅力がよみがえります。
土壁の下地には木や竹が使用されていますが、壁面の大部分は土壁そのものです。
土壁を剥がして塗り替えるには大がかりな工事が必要となるため、傷んだ部分のみ補修するのが一般的です。
表面にひび割れがある場合、その部分に下地となる土を塗り込んで乾燥させた後、薄い土の層を複数回に分けて塗って仕上げます。
費用は6畳分で5~20万円程度が目安です。表面の汚れがきれいに落ちると部屋がパッと明るい印象になります。
②珪藻土を塗る
土壁を塗り替える方法の他に、別の素材を上から塗り重ねるのも選択肢の一つです。
たとえば珪藻土を塗ると、独特のざらざらとした素材感によってお部屋の雰囲気ががらりと変わるだけでなく、土壁特有の調湿性や耐火性をそのまま維持できます。
さらに、珪藻土の持つ脱臭や消臭効果まで期待できるのもメリットです。
土壁から珪藻土に塗り替える費用は6畳の広さで15万〜20万円程度をみておくと良いでしょう。
③漆喰を塗る
土壁の上から漆喰を塗る方法もあります。漆喰は、消石灰を原材料にして作られた自然素材です。
白が基本ですが、色漆喰と呼ばれる白以外の漆喰もあります。塗り方によって多彩な模様が出せるのに加え、和洋にとらわれることなく幅広い空間に合わせやすいのも人気の理由です。
土壁と同様、調湿作用や耐火性にも優れています。強アルカリ性でもあるためカビの発生を抑えられるメリットもあります。
また、珪藻土と比べて表面がツルッとしていて艶があるのも特徴です。リフォーム費用の目安は、6畳分で15万〜20万円程度です。
漆喰のメリット・デメリットや費用相場については、こちらをご覧ください。
④壁紙を貼る
土壁の上から壁紙を貼る場合、土壁に直接貼る方法と、石膏ボードや合板を下地にした上から貼る方法の2種類あります。
土壁の傷みが少なければ直接貼る方法でも問題ありません。
しかし、劣化がひどく表面がでこぼこしている場合、石膏ボードなどによる下地処理が必要となります。
クロスはデザインが多彩で、希望通りの雰囲気に仕上げられるのが魅力です。
吸音性や断熱性など機能性を持つ壁紙を選べば、より快適な暮らしを実現できるでしょう。
リフォーム費用は6畳分で10万〜16万円程度かかります。
⑤ペンキを塗る
土壁の上からペンキを塗るリフォーム方法もあります。その場合、土壁専用のペンキを使用するのが一般的です。
土壁専用といっても、選べる色の種類は豊富にあります。色同士を混ぜて自分の好きな色を作ることができるのも魅力です。
費用は6畳分で5万〜10万円程度と、他のリフォームに比べて安価なのもメリットといえます。
ただし、土壁特有の質感や調湿効果が失われやすいといったデメリットがあるのも覚えておきましょう。
⑥羽目板を貼る
人や家具が接触して土壁の表面が削れたり、砂が落ちたりするのを防ぐのを目的に、土壁の下半分に羽目板を施工する方法もあります。
このリフォームは土壁ならではの風合いを長く保てるのに加え、調湿性能や蓄熱性能をそのまま生かせるのがメリットです。
リフォームにかかる費用は腰壁の大きさにもよりますが、6畳の広さで15万〜18万円程度が目安となります。
土壁はDIY可能? おすすめできない理由
土壁をDIYで修繕する人もいます。ただし、現状を正確に把握するためには専門的な知識が必要であり、適切なリフォームではなかった場合、二度手間となる恐れがあります。
また、表面に大きな凹凸や浮きがある場合、下地処理も欠かせません。もし下地が整っていない状態で上塗りをしたり、上から壁紙を貼ったりすると、剥離の原因となります。
壁にスイッチやコンセントが埋め込まれている場合には、電気配線も行わなければなりません。
配線工事には資格が必要となる危険な作業を伴うため、土壁をDIYでリフォームすることはあまりおすすめできません。
土壁をリフォームするタイミング
土壁のリフォームを検討する際、「どのタイミングですればいいの?」と迷うこともあるでしょう。
目安として、壁にひび割れが起きて土が剥がれてきたり、カビが生えてきたらリフォームのサインです。
また、経年劣化による見栄えの悪さや、隙間から虫が入ってくるようならリフォームをおすすめします。
リフォームにはそれなりの費用がかかるため、「まだ大丈夫かな?」と、つい様子を見てしまうこともあります。
傷みがひどくなるにつれて補修の手間やコストがかかるため、なるべく早めに対処しましょう。
補修方法や特徴を知り納得のいく土壁リフォームを
近年、日本伝統の風合いを楽しめる土壁が再び注目を集めています。
土壁の魅力を生かしながら理想のリフォームを叶えるには、どのような土壁がよいのか、どんな雰囲気に仕上げたいのかを施工会社と相談した上で決めるのがポイントです。
すでに土壁のお家にお住まいの方には、土壁特有の風合いを保つメンテナンスの他、クロスや腰壁を設けるという選択肢もあります。
土壁のリフォームが気になる方は、ぜひ山根木材にお気軽にご相談ください。
今なら「リフォームまるわかり大辞典」を無料進呈中です。お問い合わせ・資料請求は、下記お問合せフォームからお気軽にご連絡ください。
※弊社では、広島県内を施工エリアとさせていただいています。