普段生活していて、ふと家が傾いているような気がすることはありませんか?
実際に家が傾いている場合、そのままにしていると安全面や健康面でデメリットが生じる可能性があります。
放置せずに調べてみることが重要です。
そこで今回は、家の傾きはどの程度までなら大丈夫なのか、家の傾きはどう調べるのかを解説します。
家が傾く原因と、原因別のリフォーム方法・費用相場も解説するので、ぜひご参考にしてください。
家の傾きが気になるときの調べ方
何となく「家が傾いている気がする」と感じたら、放置するのは危険です。
家の傾きは自分でも確認できるので、まず以下の方法で調べてみましょう。
- チェック項目から家の傾きを確認
- 自分で傾きを測定
傾きを調べてみて問題がなければ引き続き安心して暮らせますし、本当に傾いていた場合は早めの対処が必要です。
上に挙げた傾きのチェック方法について、詳しく見ていきましょう。
チェック項目から家の傾きを確認
家の傾きは、以下のチェック項目から簡単に確認できます。
- 球状や円筒のものなど転がるものを床に置くと転がるか
- 透明なコップやペットボトルに水を入れて床に置いた際、容器に対して水面が傾いていないか
1つ目に挙げた球状や円筒のものは、ビー玉やゴルフボール、トイレットペーパーの芯や水筒など家にあるもので構いません。
また、2つ目の方法を試す場合は、水面に沿ってマジックなどで印をつけることがおすすめです。
印をつけたあと、傾いていないところに移動して改めてコップやペットボトルを置くと、軽微な傾きでも気づきやすくなります。
自分で傾きを測定する
上で紹介した方法よりもさらに正確に傾きを確認したい場合は、ホームセンターで購入できる水平器を使うことがおすすめです。
水平器内に水が入っていて、床に置いた時の気泡の位置で傾きがわかるタイプや、傾きがディスプレイにデジタル表示されるタイプなどさまざまあります。
また、同じくホームセンターで入手できるものとしては下げ振り(垂球)もおすすめです。
下げ振りは糸の先端に逆円錐型の重りをつけた道具で、壁に当てて糸を垂らした時の壁と糸の距離などから傾きを確認できます。
手軽に入手できるツールとしては、携帯アプリもおすすめです。
アプリを起動してスマートフォンを床に置くだけで、傾きがわかるアプリがあります。
専門家に測定を依頼する
自分で家の傾きを確認したけれどよくわからない、自己判断では不安という場合は、専門家に測定を依頼しましょう。
専門家に家の傾きを調査してもらうための費用は、4万〜15万円が目安です。
ただし、依頼先の業者や家の広さ、検査内容によっても費用は変動します。
家の傾きの測定は、住宅診断士や土地家屋調査士、家の傾き修正業者に依頼できます。
リフォームを前提とするなら住宅会社やリフォーム会社に相談することも可能です。
家の傾きは何度までが許容範囲?
測定の結果、家に傾きがあるとわかった場合でも、どの程度傾いているかによって対応の緊急度や内容は変わってきます。
大まかな目安は以下のとおりです。
- 3/1000まで:住むだけなら許容範囲
- 6/1000を超える:転倒などのリスクあり
- 10/1000以上:倒壊の危険性あり
例えば3/1000は、1000mm(1m)につき3mm傾いていることを示します。
それぞれのケースについての詳細と、国や保険会社による「家の傾きの被害認定基準」を確認していきましょう。
3/1000までは住むだけなら許容範囲
家の傾きが3/1000までの場合、その家に住むだけならそれほど急ぎの対応は必要ありません。
新築住宅なら距離に関係なく+-5mm、中古住宅なら3/1000未満が一般的な許容値とされているからです。
中古住宅の方が基準が緩くなっているのは、築年数の経過が考慮されるためです。
ただし、3/1000以上の傾きは、売買の際に告知義務が発生します。
近いうちに家の売却を考えているなら、売却までに傾きに対処するかどうか検討することをおすすめします。
6/1000を超えると転倒などのリスクあり
家の傾きが6/1000を超えると、転倒のリスクがあったり、めまいなどの不調をきたすことがあったりと日常生活に支障が出てきます。
慣れてしまえば違和感なく暮らせる程度の傾きではありますが、例えば小さなお子さまが家の傾きに慣れてしまうと、反対に傾きのない場所で転びやすくなり危険です。
成人でも平衡感覚がずれ、傾いていない場所でも物が斜めに見えることがあります。
「慣れれば平気」「もう慣れているみたいで特に支障はない」と感じていても、早めの対処を検討しましょう。
10/1000以上は倒壊の危険性
10/1000とは、1mにつき1cmの傾きがある状態です。
傾きが10/1000以上になると、地震発生時に倒壊する危険性が高くなります。
自分や家族だけでなく、隣家や家の近くを歩く人までも危険に晒すことになりかねません。
また、ほとんどの人はめまいや頭痛、吐き気などを感じるようになるなど、あらゆる面でリスクが上がります。
速やかに傾きを修正する工事を依頼することをおすすめします。
国や保険会社による家の傾きの被害認定基準
地震や台風などの自然災害で家が傾いた場合、国が定める「被害認定基準」を満たしていれば支援金を受け取れる可能性があります。
【国の被害認定基準】
- 全壊:家の傾きが20分の1以上(50/1000)
- 大規模半壊:家の傾きが60分の1以上20分の1未満(17/1000~50/1000)
- 半壊:家の傾きが100分の1以上60分の1未満(10/1000~17/1000)
参照:『住家の被害認定基準運用指針』・『実施体制の手引き』の改定の概要(平成30年3月)
ただし、一部損壊の場合は支援金の対象外となることもあるので事前に確認しましょう。
また、国だけでなく保険会社から補償を受けられるケースもあります。
家の傾きを放置するとどうなるのか
家の傾きに気づきながら放置してしまうと、住んでいる人の健康にも物件そのものにも悪影響が出てきます。
具体的には以下のとおりです。
- 住んでいる人の平衡感覚に悪影響を及ぼし、さまざまな不調をきたす
- 物件の耐震性が下がり、価値が下がる
急いで対処するほどではない軽微な傾きでも、将来的には傾きが大きくなり上記のようなデメリットが生じる可能性があります。
家に少しでも傾きがあるなら、これから解説する詳細をぜひご確認ください。
住んでいる人に健康被害の恐れ
傾いた家に住み続けると、平衡感覚に異常が生じます。
その結果、姿勢が崩れ、以下のような不快な症状を引き起こす可能性があります。
- 頭痛や肩こりがひどい
- 疲れが取れず、だるさを感じる
- めまいや吐き気が続く
- 食欲不振や睡眠障害に悩まされる
例えば頭痛や肩こりを感じたら、薬やマッサージなどで対処しようとする人も多いでしょう。
しかし、原因が自分の身体ではなく家の傾きにある場合は、こうした対処では根本的な解決になりません。
何をしても不快な症状が改善されないということになるのです。
耐震性が下がり家の価値が下がってしまう
家の傾きを放置していると、物件の重みでさらに傾斜がひどくなり、家の価値が下がってしまうおそれがあります。
「いつか今の家を売却して新しい家を買いたい」「何かあった時のための資産という意味でも、将来的に子供に家を譲りたい」などと考えている方も多いですが、家が傾いているとこうしたことも難しくなる可能性があります。
また、傾いた家は地震などで倒壊しやすくなります。
物件の資産価値を守るためにも、そこに住むご家族の安全や健康を守るためにも、家の傾きを直すことは重要です。
家が傾く5つの原因
家が傾く原因としては、主に以下の5つが考えられます。
- 地盤沈下
- 液状化
- 老朽化
- 施工不良
- シロアリの被害
家が傾いた原因によっては、国や保険会社、施工会社から補償を受けられることもあります。
詳しく見ていきましょう。
地盤沈下
地盤沈下とは、家が建っている地面そのものが沈むことです。
地盤沈下は地震のような自然災害でも発生しますが、井戸水のくみすぎや近隣での掘削工事といった人為的な原因によっても発生します。
特に地面の一部だけが沈む「不同沈下」が起こると、家の一部分だけが沈んでいくため家の傾きが大きくなりがちです。
地盤沈下が地震や地震による津波などで発生したものなら、地震保険から補償を受けられることがあります。
液状化
家の傾きは、液状化や地盤のズレで発生することもあります。
液状化とは、砂地盤などが地震で激しく揺れた際に液体のように柔らかくなることを指します。
固いはずの地盤が液状になることで家を支えられなくなり、家が傾いてしまうのです。
液状化が生じるような大きな地震の場合は、地震保険から補償を受けられるだけでなく、国から補助金が出ることもあります。
実際に、東日本大震災や熊本地震では「被災者生活再建支援制度」によって、住宅再建の補助金が支給されました。
老朽化
家が老朽化する過程では、柱や梁が雨風にさらされて傷んだり、カビで腐食したりすることがあります。
同じ家で長年住む以上、ある程度の老朽化は避けられません。
老朽化を放置していると大規模な修繕が必要になり、費用がかさんだり、修繕工事中に一時的な退去が必要になったりします。
こうした点も踏まえて、定期的に検査を行いこまめなメンテナンスをしましょう。
施工不良
家の傾きは、災害や老朽化といった避けられない原因だけでなく、施工不良によって発生することもあります。
部材の長さが適切でなかったり、家の強度が不十分だったり、用いるべき金物を使わない欠陥工事が行われていたりすることがあるのです。
家の傾きが施工不良によるものだと認められれば、施工者の責任として改修を依頼できることもあります。
ただし、補償期間には限りがあることもあります。
施工不良による家の傾きが疑われる場合は、軽微な傾きだったとしても早めに原因を突き止めましょう。
シロアリ被害
家の基礎や柱を食べ、内部をスカスカにするシロアリによって、家が傾くこともあります。
放置しているとさらに基礎や柱の内部が弱くなってしまうため、気づいた時点で早めに対処することが重要です。
具体的な対処法は被害の範囲にもよりますが、通常はシロアリ被害を受けた柱や基礎部分を対象とした交換・補強が行われます。
シロアリ駆除については、保険金や補助金は基本的にありません。
ただし、シロアリ駆除の費用を確定申告で計上すれば、税額控除の対象になります。
原因別!家の傾きのリフォーム方法と費用相場
家の傾きを直すためのリフォームは、原因により異なります。
それによって費用相場も変わってくるため、ここでは「液状化・地盤沈下」「老朽化・施工不良」「シロアリ駆除」にわけて家の傾きを直すためのリフォーム方法と費用相場を解説していきます。
液状化・地盤沈下
液状化・地盤沈下による家の傾きでは、主に以下の5つのリフォームが行われます。
施工方法 | 費用相場 | 工期 | 対応条件 |
(1)硬質ウレタン注入工法 | 200〜600万円 | 1〜3週間 | ・対応可能な傾き:5cm程度まで ・安定した地盤が対象 |
(2)グラウト注入工法 | 230〜600万円 | 1〜2週間 | ・対応可能な傾き:5cm程度まで ・軟弱な地盤でもある程度対応可 |
(3)土台上げ工法 | 100〜400万円 | 10日〜3週間 | ・対応可能な傾き:10cm程度まで ・安定した地盤が対象 |
(4)耐圧板工法 | 200〜700万円 | 10日〜5週間 | ・対応可能な傾き:大きくても可 ・安定した地盤が対象 |
(5)鋼管圧入工法 | 300〜1,000万円 | 3週間〜2ヶ月 | ・対応可能な傾き:大きくても可 ・地盤沈下の修正も可能 |
(1)と(2)は基礎に薬液を注入し、傾いた部分を補うことで家の傾きを修正します。
(3)と(4)は建物の基礎の下にモルタルを流し込んで家の傾きを元に戻す方法です。
(5)のリフォームでは、地盤の支持層に杭を打ち込んで家を支え、傾きを修正します。
傾きの程度や地盤の状態によって、どのリフォーム方法が適切かは変わってきます。
また、再沈下のしにくさもリフォーム方法によって異なるため、施工業者などプロと相談しながらどの手法を用いるか決めることがおすすめです。
老朽化・施工不良
老朽化や施工不良による家の傾きは、問題となっている箇所を交換したり、既存の問題部分を残して金物などで補強したりして修正します。
例えば床下の根太が傷んでいて交換する場合、設置費用の相場は3万〜15万円程度です。
なお、新築工事日から10年以内であれば、一定の条件を満たすと「施工瑕疵」としてリフォーム費用を施工業者側に負担してもらえることがあります。
施工瑕疵が発覚したら、まずは施工を担当した業者に連絡を取るようにしましょう。
業者とトラブルにならないか不安、きちんと対応してもらえるかわからないという場合は、一旦弁護士などに相談してアドバイスを聞いたり、対応を依頼したりすることもおすすめです。
シロアリ駆除
シロアリ駆除にかかる費用は、1㎡あたり1,150〜3,000円が目安です。
一般的な30坪程度の戸建て住宅であれば、10万円前後が相場になるでしょう。
なお、シロアリ被害で床下の根太が傷んで撤去・交換が必要な場合は、3〜5万円程度がかかります。
また、合わせてフローリング材の交換もする場合には、6畳で9〜18万円程度かかるなど具体的な施工内容によって費用は大きく変わります。
家の傾きは放置せずにまずは相談を
家の傾きは、放置すると安全性が脅かされるだけでなく、日常生活における健康被害の原因になることもあります。
家にあるもので自分自身で傾きをチェックすることも可能なので、傾きが気になる場合は試してみましょう。
より厳密な確認は、専門業者に相談することがおすすめです。
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家の傾きがさらに大きくなり、さまざまな支障が出る前に、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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