家で楽器演奏や動画配信、ホームシアターを楽しむために、自宅に防音室を作りたいという人が増えています。
しかし、一口に防音室といっても使用目的により、必要な広さや遮音性能は異なります。
理想の防音室を手に入れるため、マンションや戸建てに設置できる防音室の種類や費用、工事方法、注意点を詳しく見ていきましょう。
自宅で音楽や映画を楽しむ!防音室のリフォーム方法と費用相場
自宅に設置できる防音室には、リフォームタイプとユニットタイプがあります。
どちらを選ぶかで費用相場や防音効果などが変わってくるので、まずはそれぞれの特徴を把握することが重要です。
リフォームタイプとユニットタイプそれぞれの費用相場や特徴を確認していきましょう。
リフォームタイプの防音室:390~410万円
リフォームタイプの防音室とは、購入した自宅の一室を防音室にしたものです。
天井、床、壁、窓周りなど全てをオーダーメイドできるため、デザインや性能の自由度が高く、理想の防音室が手に入ります。
遮音性能の数値基準は後ほど詳しく解説しますが、リフォームタイプの防音室の場合、ピアノやステレオなどの大きな音でも漏れを防げるD-65~75も実現可能です。
ただし、大規模な施工となるため費用相場は6畳のマンションで390万円、同じく6畳の木造住宅で410万円と高めです。
鉄筋コンクリート(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)の住宅よりも、木造や鉄骨(S造)の住宅の方が工事費用は高くなる傾向にあります。
ユニットタイプの防音室:50万~300万円
ユニットタイプの防音室は、専用部材を組み立てて作る防音室です。
部屋そのものを防音室にするのではなく、部屋の中に組み立て式の防音室を設置するイメージで、大掛かりなリフォーム工事が不要な点がメリットです。
自分で組み立てられる商品や、小さな空間でも閉塞感がないようガラス窓のついた商品もあります。
部屋自体をリフォームするわけではないため賃貸住宅でも設置可能です。
工事費用もリフォームタイプより安価で、大きさにもよりますが約50万〜300万円が相場です。
ただし、遮音性能は最大でもD-35〜40程度とそれほど高くありません。
ピアノやステレオ、テレビの音や、通常の会話の声でも完全には遮音できず、思っているよりも音漏れしやすくなります。
防音室リフォームの工事内容
防音室リフォームでは、壁・床・窓に手を加えます。具体的には次の通りです。
- 壁:内部に吸音シートや遮音シートを入れる
- 床:床下に防音材を入れたり、防音性のある床材に張り替えたりする
- 窓:防音ガラスに交換したり、内窓を設置して二重窓にしたりする
- ドア:防音ドアを設置して音漏れの原因となる隙間を密閉する
上記のような施工により、部屋全体を防音効果のある建材で囲むのです。
なお、遮音とは音をシャットアウトし、音が外に漏れたり、外の音が中に入ったりするのを防ぐことをいいます。
一方吸音とは、音を吸収して外に漏れないようにすることです。
吸音は室内で音が反響することも防ぐため、防音室内での音の聞こえ方にも影響します。
防音室リフォームを成功させるポイント
理想の防音室リフォームをするには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 必要な広さと天井高を確保する
- 床の強度を確認する
- 必要な遮音性を満たせるようにする
- 遮音性だけでなく音響も意識する
- 目的に応じた防音室を計画する
一口に防音室といっても、必要な防音性や広さは目的によります。
防音室リフォームをしたけれど防音性が足りない、狭い、居心地が悪いなどといったことのないよう、しっかり確認していきましょう。
必要な広さと天井高を確保する
防音室では、物を置いたり何かしらの動作をしたりすることが予想されます。防音室の使い方に合った広さと天井高を確保しましょう。
例えば「楽器演奏を楽しみたい」という場合でも、何の楽器を演奏するのかによって必要な広さは以下のように異なります。
- クラリネット、オーボエ、ウクレレ、歌:0.8畳
- バイオリン、サックス、ギター:1.2〜1.5畳
- アップライトピアノ:2〜3畳
- グランドピアノ:3〜5畳
- ドラムス:4.5〜5畳
また、天井高は防音効果のある素材を入れることを考え、2.4mほど確保したいところです。
使う楽器によっては天井の高さで音の聞こえ方や伸びが変わることもあります。
床の強度を確認する
防音室リフォームをする場合は、床の強度も重要です。
防音室を作る際は、先述の通り床や壁、ドアなどに遮音材を入れます。
遮音材は重いため、防音リフォームをするなら床にはその重さに耐えられるだけの強度が必要なのです。
特に木造住宅の2階以上の部屋やマンションの部屋は、床の強度が防音室に耐えられるほどではないことが多いです。
事前に施工業者に確認し、安全性を確保しましょう。
必要な遮音性を満たせるようにする
音楽などを心おきなく楽しめる防音室を作るには、遮音性能が非常に重要です。
遮音性能は「D値」や「Dr値」で表され、数値が高いほど遮音性能が高いとされます。
なお、D値は日本建築学会で使われる値、Dr値は日本工業規格(JIS)で使われる値ですが、表記が違うだけで意味は同じです。
必要な遮音性能は、下表から確認してみてください。
規格 | 遮音性能 |
D-55 | テレビ・ラジオ・会話の声は聞こえない ステレオやピアノの音はかすかに聞こえる |
D-50 | テレビ・ラジオ・会話の声はほとんど聞こえない ステレオやピアノの音は小さく聞こえる |
D-45 | テレビ・ラジオ・会話の声はかすかに聞こえる ステレオやピアノの音は聞こえる |
D-40 | テレビ・ラジオ・会話の声は小さく聞こえる ステレオやピアノの音ははっきり聞こえる |
D-35 | テレビ・ラジオ・会話の声はきこえる ステレオやピアノの音はよく聞こえる |
D-30 | テレビ・ラジオ・会話の声は内容がわかるほど聞こえる ステレオやピアノの音はとてもよく聞こえる |
D-25 | テレビ・ラジオ・会話の声ははっきり内容がわかるほど聞こえる ステレオやピアノの音はうるさいほど聞こえる |
遮音性だけでなく音響も意識する
防音室というと「外に音が漏れないように」ということを意識しがちですが、室内で音がきれいに聞こえることも重要です。
音は壁や天井に反射して、しばらく響きが残ります。
この「残響」が多すぎると音がぼやけてしまいますが、少なすぎると音がクリアになりすぎて音質の良さが半減します。
室内での音響をよくするには、部屋の大きさを踏まえて吸音性の材料と非吸音性の材料のバランスを取ることがポイントです。
例えば防音室内が狭い場合は残響が多くなりやすいので、吸音性をあげることがおすすめです。
反対に防音室内が広いと残響が気にならなくなるため、吸音性を下げることで音が反射しやすくなり、豊かな音響を楽しめます。
目的に応じた防音室を計画する
一口に防音室といっても、ピアノやドラム、ギターなど楽器を演奏したい場合と、ホームシアターとして使ったり動画配信のために使ったりしたい場合とでは、必要な防音性能や適切な施工方法が異なります。
目的を踏まえずに何となく防音室を作ると、結局音漏れが気になり防音室を有効活用できない可能性があります。
施工業者に防音室の用途を伝え、目的に合った防音室を計画しましょう。
目的別!防音室リフォームのポイント
防音室を作る際には、ここまで触れてきた防音性・吸音性に加え、防振性が重要な場合もあります。
しかし、それぞれがどの程度必要なのかは防音室の使用目的により異なります。
他にも防音室に施すべき工夫は目的により異なるので、詳しく見ていきましょう。
合わせて、防音室リフォームの費用相場も紹介していきます。
ピアノ演奏のための防音室:100~400万円
ピアノ演奏のための防音室なら、遮音性と吸音性の両方が必要です。遮音性能はD-55以上を目安としてください。
ピアノの音は室外に漏れやすいため、グラスウールや石こうボードといった防音材を使って壁や天井を厚くすること、防音扉や防音窓を設置してあらゆる場所からの音漏れをしっかり防ぐことが重要です。
また、ペダルを踏む際に振動も生じやすいので、床材は防音ゴム付きのものにしましょう。
これらを踏まえると、防音室リフォームの費用相場は100万〜400万円です。
ドラム演奏のための防音室:200~550万円
防音室でドラム演奏をするなら、ピアノや管楽器を使う場合以上の高い遮音性能が求められます。
ドラムを叩いた時に床や壁が振動し、それによっても音漏れが発生するため、壁には遮音施工だけでなく、振動を漏らさないようにする防振施工も必要なのです。
また、ドラムの演奏では残響が少なく、音がクリアに聞こえる環境が理想的です。
このことも踏まえ、吸音材も適切に取り入れていきましょう。
こうしたドラム演奏を想定した防音室リフォームの費用相場は、200万〜550万円です。
ホームシアター:150~300万円
ホームシアターとして防音室を作りたいなら、外への音漏れを防ぐだけでなく、外部から入ってくる音をシャットダウンして映画の世界に没頭できる環境を作ることがポイントです。
遮音性能の目安はD-60〜70前後とし、窓があるなら内窓を設置しましょう。
部屋の中にダクトがある場合は、ダクトから入ってくる音を防ぐ対策も重要です。
これらを踏まえると、ホームシアター用の防音室リフォームにかかる費用相場は150万〜300万円です。
自宅で防音室リフォームを行う際の注意点
自宅で防音室リフォームをする場合は、以下の点に注意しましょう。
- 換気をしっかりと行う
- マンションの場合は規約を確認する
- 防音室リフォームの実績がある施工会社に依頼する
これらの注意点は、トラブルを防ぎ、満足のいく防音室を手に入れるために重要です。
それぞれについて解説するので、確認していきましょう。
換気をしっかりと行う
防音室では隙間を塞いで防音性を高めることを考えがちですが、換気にも気を配らなければなりません。
換気が不十分だと酸欠状態になりかねませんし、結露も発生しやすくなります。
安全かつ快適に防音室を使えるよう、1〜2時間おきに5〜10分間換気するようにしましょう。
この時、開口部を2ヶ所作ると空気の通り道ができて効率的に換気ができます。
窓が1ヶ所しかない場合は、向かい合わせとなる位置のドアを開けたり、サーキュレーターや扇風機を活用して空気の流れを作ったりしましょう。
マンションの場合は規約を確認する
防音室に限った話ではありませんが、マンションでリフォームをする場合は、最初に管理規約を確認しましょう。
室内であっても窓などは共有部分とされ、リフォームできないことがほとんどです。
思ったように工事ができない可能性がありますし、知らずにリフォームしてしまうとトラブルになりかねません。
ただし、省エネにも役立つ内窓の設置については許可がおりることもあります。
リフォーム会社と一緒に規約を確認してみてください。
防音室リフォームの実績がある施工会社に依頼する
防音室リフォームを依頼する施工会社は、「すでに実績があるかどうか」を重視して選ぶことがおすすめです。
ここまで解説してきた通り、一口に防音室といってもどの程度の広さが必要で、どのような遮音対策が必要なのかは使用目的によって異なります。
そのため、ベストな施工を考えるには、楽器の音の周波数特性などについてある程度の知識が必要です。
こうした点から、防音室リフォームはすでに実績があり知見を持っている施工会社に依頼するようにしましょう。
目的に合った防音室リフォームで自宅時間をさらに豊かに
目的に合った広さや防音性能のある防音室を手に入れれば、周りのことを気にせず心おきなく楽器演奏や映画・音楽鑑賞に没頭できます。
自宅での時間がより豊かで楽しいものになるでしょう。
目的に合った防音室の計画は、リフォーム費用にも影響するため非常に重要です。
理想の防音室リフォームをするために、知識や実績を持つ施工会社にコンタクトを取り、何のために防音室を作りたいのか、使用イメージなどを伝えて相談してみましょう。
山根木材では、お客様一人ひとりのニーズに応じた最適な防音室リフォームのご提案が可能です。
防音性能やデザイン、予算に関するご相談も承りますので、気になる方はぜひ一度ご相談ください。
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※弊社では、広島県内を施工エリアとさせていただいています。