近年耳にする機会が増えた「IoT住宅」。インターネットを介して、いろいろな家電と家の設備などを連携させることにより、生活を便利にした住まいを指します。
外出先で家の設備や家電を操作できるのはもちろん、電気使用量など家のエネルギー消費状況を見える化することにより省エネにつながるのも魅力です。
そのため、昨今の光熱費の高騰を受けて、より大きな注目を集めています。
IoT住宅を筆頭に住宅業界でもAIやIoT技術を取り入れた住まいの提供が行われているものの、現状普及率はまだまだ低いのが実情です。
この記事では、IoT住宅に関する基礎知識やメリット・デメリットを解説します。
IoT住宅に興味はあるものの、導入すべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。
IoT住宅とは?
IoT(Internet of Things、アイ・オー・ティー)とは、家電やガジェットなどのデバイスに通信機能を搭載して、インターネットに接続・連携させる技術のことをいいます。
この技術を搭載した住宅がIoT住宅です。
IoT技術を駆使すれば生活やビジネスの効率化につながり、新たな価値を生み出すことができます。
身近な例でいえば、通信機能を搭載した腕時計であるスマートウォッチ、AIを活用して音楽再生や家電の音声リモコンなどに使えるスマートスピーカーなどが、IoT技術を活用したデバイスです。
住宅にIoT技術を搭載すると家電のほか、玄関ドア、窓、シャッター、浴室などをインターネットに接続することができ、スマートフォンのアプリで一括管理できます。
すべてを手元の機器で遠隔操作できるうえ、留守中でも家の様子を監視できるようになり、セキュリティが万全で防犯に強い住まいを実現可能です。
IoT住宅の基本概念
昨今、インターネットやAIの技術の進歩が著しく、私たちの生活に深く関わるようになってきています。
今や私たちにとって欠かせないものとなったスマートフォンの発展とともに、スマート家電が注目されるようになり、2017年ごろからあらゆる分野でIoT技術がさかんに活用されるようになりました。
IoT住宅が注目され始めたのは2018年ごろのこと。2010年から先行して普及していたスマートハウスという概念から派生する形で、現在のIoT住宅が形作られたといわれています。
IoT住宅とスマートハウスとの違い
上記のとおり、IoT住宅はスマートハウスから派生したものとされ、今でも両者は同じような意味合いで使われることが多くなっています。しかし、両者は異なる概念です。
スマートハウスという概念が初めて提唱されたのは、1980年代のアメリカでした。
簡単にいえば、家電や住宅設備を配線で互いに接続し、すべてを一括管理することで生活を便利で快適なものにしようという考え方をいいます。
快適な生活を実現するという意味ではIoT住宅とも共通ですが、大きな違いは、スマートハウスがエネルギーに着眼点を置いていることです。
スマートハウスには「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」という3つの要件があります。
つまり、太陽光発電などでエネルギーを生み出し、そのエネルギーを蓄電池などに蓄え、同時にエネルギーの消費量を抑える家こそがスマートハウスということです。
住宅内の機器や設備と連携して、住宅におけるエネルギーの使用量や発電量を監視・生業とするシステムである「HEMS(ヘムス)」を中心として、IT技術により家庭内のエネルギー消費を制御する家という意味が強いのが、スマートハウスの特徴です。
一方、IoT住宅の主な目的は生活の利便性を向上することにあり、エネルギーだけに焦点を当てているわけではありません。
なお、同じように用いられる言葉に「スマートホーム」があります。
これは、IoT家電や設備とさまざまなサービスを連携させた利便性の高い暮らしを実現する家を指し、IoT住宅の概念に近いものといえるでしょう。
IoT住宅がもたらす生活の利便性
IoT住宅で暮らすと生活の利便性はどのように向上するのでしょうか。具体的な利便性アップの内容を紹介します。
外出先で住宅設備やスマート家電の遠隔操作ができる
IoT住宅では、住宅設備や家電がインターネットに接続されているため、スマートフォンを使って外出先からでも住宅設備やスマート家電の遠隔操作が可能です。
例えば、外が暗くなるタイミングで照明を点灯させておけば、帰宅が遅くなっても家が無人であることを外から悟られないようにすることができます。
窓のシャッターを遠隔で締められるようにして、外から室内が見えないようにしておくのも有効です。
反対に、出かけてから電気の消し忘れに気づいた場合でも、スマートフォンでスイッチを切ることができます。
夏と冬は、外出先でエアコンのスイッチを事前に入れておけば、帰宅する頃には快適な室温になっているでしょう。
電気自動車の充電も予約管理できるので、夜間の電気料金が安い時間帯に予約して電気代の節約も可能です。
スマートフォンのGPS機能と住宅機器が連動していれば、帰宅後に必要となる機能を事前にまとめてオンにしておくこともできて便利です。
IoT機器を音声操作ができる
住宅機器や家電を音声操作できるのもメリットです。音声操作は直感的なものなので、機械操作が苦手な子どもや高齢者でも簡単に使いこなせます。
例えば、起床時スマートスピーカーに「おはよう」と声をかければ、カーテンが開いて照明が自動的に点きます。
同様に「ただいま」と声をかければ、室内の照明が次々に点灯、カーテンやエアコンも自動で動作するので、疲れて帰宅したときのストレスも軽減されるでしょう。
出火時に火災報知器と連動してスマホに知らせてくれる
IoT住宅は、自宅の火災に対する備えとしても有効です。
通常火災報知器は在宅時でないと効果を発揮しませんが、インターネットと接続しておけば、外出先でもプッシュ通知を受け取ることが可能です。
火災の早期発見につながり、被害を最小限に食い止められる可能性があります。
さらに、火災報知器の故障などメンテナンスに関する情報も通知するので、気づかないうちに動作しなくなっていたという事態も起こりにくい点も魅力です。
スマートロックでカギの開け閉めができ、戸締りを検知する
スマートロックとは、スマートフォンやICカードなどのデバイスで扉の開錠・施錠ができるシステムのことです。玄関の鍵をスマートロックにすれば開け閉めが簡単になります。
また、物理的なカギを使用しないため、カギを忘れたときでも安心です。
他人にカギを複製されるリスクも低く、便利で安全なアクセス制御が可能です。
最近ではGPS機能を利用して、一定距離内に近づくと開錠するタイプも登場しており、荷物が多いときや子どもを抱っこしているときなどに重宝します。
子どもの帰宅をスマホ通知し、ネットワークカメラで見守りできる
IoT住宅なら、自宅にいる子どもやお年寄りの様子をチェックすることができ、いざというときにも安心です。
子どもやお年寄りが帰宅したり外出したタイミングで、スマートフォンに通知が来るため、通常と異なる行動をしていたらすぐにチェックできます。
エアコンなどと連動して室内の温熱環境を確認することもできるため、夏場の熱中症予防などにも効果が期待できます。
お年寄りの生活動作や窓の開閉などの異常も感知してくれるので、自宅はもちろん、一人暮らしの高齢の親の住まいをIoT住宅化しておくのもおすすめです。
電気使用量の見える化を行い、家電を自動で省エネ制御してくれる
家電や住宅設備をインターネットに接続しておくことで、電気やガスの使用量がひと目でわかります。
使用量の見える化が使いすぎの防止につながるほか、自動制御による省エネ効果も期待できるでしょう。
無駄なエネルギー消費を控えることで、電気やガスを効率的に使えるようになり、室内の快適性をしっかり保ちつつ、家計にも環境にも優しい暮らしができます。
IoT住宅で暮らすメリット
さまざまな面で快適な生活をサポートしてくれるIoT住宅。暮らすことでどのようなメリットが得られるのか、具体的に見ていきましょう。
家事効率が良くなる
IoTに対応した調理機器やスマート家電などを上手に使いこなせば、家事を効率化できます。
冷蔵庫を例に見ると、家にある食材を使用したレシピの検索、重量検知プレートによる食材残量の通知、食品ごとの下ごしらえや保存方法等のアドバイスなど、多様な機能を搭載した製品が各メーカーから登場しています。
料理の手間が減るのはもちろん、食材の買い出しも効率的になるでしょう。
他にも、外出先から遠隔操作できるロボット掃除機を使えば、誰もいない間に自動で掃除が完了します。
集めたゴミを自動で排出する製品もあり、掃除に関してはほとんど人の手をかけることなく完結できてしまいます。
時短になる
IoT住宅に暮らせば家事の大幅な時短も可能です。
まず、テレビやエアコンなどの家電を動かしたいとき、スマートフォンに声をかけるだけですべてが完了します。
家電が増えるほどリモコンの数も増えて面倒ですが、音声操作であればリモコンをわざわざ探す必要がなく、余計な時間を短縮できるでしょう。
ニュースや書籍、天気予報、ネットショッピングなど、スマートスピーカーがもたらす時短効果は絶大です。
数ある家事の中でも時短ニーズが高い洗濯についても、IoT住宅なら時短ができます。
スマートフォンアプリを操作すれば、洗濯物の多さから適切な洗剤・柔軟剤の量を自動計測し、乾燥まで自動制御で行ってくれます。
これなら洗濯中に外出しても問題ないので、洗濯による時間拘束を最小限にできるでしょう。
防犯性が向上する
住まいを機械的に管理できるIoT住宅は、防犯性や安全性の向上も期待できます。
先ほども紹介したように、玄関をスマートロックにしておけば外出先から遠隔操作ができるため、鍵をかけ忘れたときでも家に戻ることなく施錠が可能です。
帰宅が夜遅くなるときや長期不在のときも、外出先から照明やシャッターを操作することで、外から留守だと気づかれないようにできます。
ネットワークカメラを導入すれば、外出中でも子どもやペットの様子を見守れるうえ、誰が訪問してきたかも一目瞭然で安心です。
付加価値の高い住まいになる
IoT住宅はまだ普及がそれほど進んでいませんが、今後その価値に対する理解が進んでいけば、IoT住宅のニーズが高まることも予想されます。
そうなれば、IoT住宅であることが付加価値となって再販価値が高まる可能性も高いでしょう。
一度IoT住宅の便利な暮らしに触れると、以降の住み替え時にも同じような便利さを求めると考えれば、普及が進んだ先には「住まい選びはIoT住宅化していることが前提」という人も増えてくるかもしれません。
ちなみに賃貸マンションなどでは、すでにIoT住宅の不動産価値が向上している例も多いようです。
IoT住宅で暮らすデメリットや導入に伴う問題
上記のように多くのメリットを期待できるIoT住宅ですが、導入に伴ってはデメリットや問題点もあります。
以下に挙げるポイントも十分に理解したうえで、導入するかどうか慎重に判断したいところです。
セキュリティリスクがある
IoT住宅で暮らすにあたり、特に注意しなければならないのが新たなセキュリティリスクです。
IoT推進コンソーシアム、総務省・経済産業省は「サイバー攻撃などによる新たなリスクが、モノやその利用者の安全や、個人情報・技術情報などの重要情報の保護に影響を与える可能性がある」として、IoT機器等の供給者と利用者を対象に「IoTセキュリティガイドライン」※を作成しています。
IoT機器はインターネットにつなげることが前提のため、パソコンやスマートフォンと同様、常にシステムを最新の状態に保つ必要があります。
アップデートをおろそかにすると、ハッカーから不正アクセスされ、個人情報が流出してしまうかもしれません。
アプリの最新アップデート情報の通知が来たら、速やかにアップデートをかけるなど、必要な対策を講じるよう心がけましょう。
※引用 総務省「IoT セキュリティガイドライン ver 1.0」
高齢者にとってIoT機器の操作が難しい
スマートスピーカーでの音声操作は直感的なため、高齢者や子どもにとっても扱いやすいですが、スマートフォンを使用しての操作はハードルが高いと感じる可能性があります。
スマートフォンの扱いに慣れていない高齢者にとっては、むしろ従来型のリモコンのほうが操作しやすいかもしれません。
すべての機器操作をスマートフォンに統一するのではなくリモコンでも操作できるようにするなど、高齢者や子どもにも配慮し、家族全員にとって使い勝手の良い住まいにすることが大切です。
機器メーカーそれぞれで規格が異なる
IoT住宅では、さまざまな住宅機器や家電を相互に接続させる必要がありますが、メーカーごとに採用している規格が異なるケースがあるため注意しましょう。
規格の異なる製品同士をつなげることは簡単ではないので、せっかくIoT対応の製品を購入しても、有効活用できない可能性があります。
IoT住宅にする場合、どの規格をメインに採用するのか確認しておきたいところです。
ただし、最近ではそういった問題を解決してくれる標準規格も登場しています。
将来のデバイスの追加や買い替えも視野に入れて、標準規格の採用を検討してもよいでしょう。
メンテナンスが困難になりやすい
ITやAIに関する技術は日々目まぐるしい進歩を遂げており、現時点で最新のIoT機器も数年すれば陳腐化してしまう可能性があります。
また、こうした機械は高度で繊細なモノであるため、定期的な清掃や部品交換などが欠かせません。
壁や天井の内部に埋め込むなど、設置場所によってはメンテナンスや設備交換が難しく、最新機器に入れ替えようとすると大規模な工事が必要になるケースも考えられます。
今後のメンテナンス性や入れ替えのしやすさを考慮して、作業スペースが確保できる場所に設置するようにしましょう。
IoT住宅の技術でより便利に、より効率的に暮らそう
IoT住宅は、インターネットを介して住宅設備や家電を相互につなぐことで、私たちの生活を快適で便利なものにアップデートしてくれます。
一方、セキュリティの問題など、従来の住宅にはなかった新たな脅威も存在することから、導入にあたってはプロの意見を取り入れるのがおすすめです。
広島・東広島・福山エリアでIoT住宅の導入を検討するなら、まずは山根木材ホームへご相談ください。
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