ZEHは「ゼッチ」と読み、地球の未来と家族の暮らしを守るためにエネルギー収支をゼロ以下にすることが可能な住宅をZEH住宅と言います。
ZEH住宅は家庭で使うエネルギーを自ら作り出すシステムを搭載し、1年間のエネルギー収支がゼロ以下を目指します。
これから住宅を建築するのであれば、今後の起こり得るエネルギー不足に備えてZEH住宅を検討する必要があります。
今回の記事では、ZEH住宅についての基本的な情報をまとめました。
ZEH住宅とは?
ZEH住宅とは「net Zero Energy House」を略した言葉であり、太陽光発電などで電気を創り出し家庭で使用するエネルギーを賄うことで、住まいのエネルギー収支を実質ゼロ以下にします。
エネルギー収支をゼロ以下にするためには、エネルギーを創るのみでなく消費エネルギーも減らす必要があります。
ZEH住宅にはエネルギーを創るシステムの他に、消費エネルギーを最小限に抑える断熱性が高い設備や省エネシステムの設置が求められます。
現在日本はZEH住宅の普及に力を入れており、ZEH住宅は今後ますます増えていきます。
ZEHの基準
ZEH住宅として認められるためには国が定めている強化外皮基準を満たす必要があり、基準値はお住まいの地域によって異なります。
強化外皮基準とは、住宅の内部から床・屋根・開口部・外壁などを通過して外部に逃げる熱量を外皮全体で平均した値のことです。
ZEHの種類
ZEHにはいくつかの種類があり、エネルギー消費量の削減割合で分類されます。戸建に用意されているZEHの種類は次の通りです。
ZEHの種類 | 一時エネルギー消費量の削減率 | その他 |
ZEH | 断熱・省エネで20%以上 創エネを含めて100%以上 |
|
ZEH+ | 断熱・省エネで25%以上 創エネを含めて100%以上 |
外皮性能のさらなる強化などを含む |
Nearly ZEH | 断熱・省エネで20%以上 創エネを含めて75%以上100%未満 |
寒冷地や低日射地域など創エネが十分にできない地域が対象 |
Nearly ZEH+ | 断熱・省エネで20%以上 創エネを含めて75%以上100%未満 |
寒冷地や低日射地域など創エネが十分にできない地域が対象・外皮性能のさらなる強化などを含む |
ZEH Oriented | 断熱・省エネで20%以上 | 都市部などの土地に限りがあり創エネが難しい地域が対象 |
次世代ZEH+ | ZEH+またはNearly ZEH+に以下の要件を2つ以上追加 ・蓄電システム ・燃料電池 ・V2H充電設備 ・太陽熱利用温水システム |
これまでZEH+がZEHの分類の最上位ランクでしたが、より高機能なZEHとして次世代ZEH+が生まれました。
ZEH住宅は住宅建築時に補助金を得られる制度が複数用意されており、ZEHの分類ごとに申請可能な補助金の種類が変わります。
はじめからZEHの補助金申請を予定しているのなら、該当の条件に当たるZEH分類を確認する必要があります。
ZEH住宅に必要な3つの要素
ZEH住宅はエネルギーを創り出す創エネと、エネルギーの消費を抑える省エネに力を入れた住宅です。
ここでは、ZEH住宅に求められる3つの要素について説明します。ZEH住宅では一部ではなく全ての要素が揃う必要があります。
省エネ
太陽光発電により自宅でエネルギーを創ってもエネルギー消費量が多い状態では、総エネルギー収支をゼロ以下にできません。
ZEH住宅では、省エネ効果のある冷暖房・換気システム・高効率の給湯システムなど使用して、家庭全体の電力消費量を抑えます。
また、ZEH住宅では専用システム「HEMS」(Home Energy Management System)を活用するため、家庭内の電力の稼働状態が確認できます。
電力の稼働状況を見える化すれば、省エネについて強い関心が持てるようになります。
断熱
住まいの冷暖房効率を上げるためには十分な断熱が必要です。ZEH住宅は高断熱材を活用して外気に左右されず室内の温度を維持します。
最低限の冷暖房を使用するのみで、冬は暖かく夏は涼しい住居環境で過ごすことができます。
具体的な断熱の手段には、高断熱材の導入・高性能の窓やサッシの活用などが存在します。
創エネ
創エネの方法には水力発電や風力発電などさまざまなものがありますが、住宅で取り入れる最も一般的な創エネ設備は太陽光発電システムです。
ZEH住宅では主に住まいの屋根に太陽光発電システムを設置し、自然の力で電力を創り出します。
また、家庭で使い切れなかった電力を電気会社に売電すれば、売電収入が得られます。
ZEH住宅のメリット
現在、ZEH住宅が注目を集めている理由として、ZEH住宅には多くのメリットが存在するという点があります。
ここでは、ZEH住宅を建築するメリットについてまとめました。
夏は涼しく冬暖かい暮らしができる・ヒートショックを予防できる
ZEH住宅は高気密かつ高断熱で作られているため、外気温に左右されない快適な暮らしが実現できます。
ZEH住宅なら少し冷暖房を活用するのみで、どの季節も過ごしやすくなります。
一定の室温が保たれることで、温度差が原因で起こるヒートショックのリスクも減らせます。
光熱費を節約ができる
ZEH住宅は冷暖房効率が上がるのみでなく創エネ効果でエネルギーを自給可能なことから、光熱費の大幅な節約が実現します。
年間の購入した電気代と売電収益を計算した結果、エネルギー収支がゼロ以下になる状態も期待できます。ただし、エネルギー収支のバランスはお住まいの地域の気候に左右されます。
高く売却できる可能性がある
ZEH住宅は一般社団法人「住宅性能評価・表示協会」の認証制度にて高評価が受けられるため、住宅そのものの資産価値が高くなります。
将来住まいを売却する際に、高値がつく可能性が高くなります。
災害などの非常時でも電力を確保できる
ZEH住宅に太陽光発電システムのみでなく蓄電池も設置すれば、一定の電力を常に自宅に蓄えられます。
そのため、災害時に停電が発生しても問題なく電気を使うことができます。
蓄電可能な電力の量は、選択する蓄電池で異なります。蓄電池は災害時以外に、夜間や天候が悪い日の電力としても活用可能です。
ZEH住宅に関係する補助金の対象になる可能性がある
ZEH住宅の建築は、エネルギー消費量削減を目的として世界的に進められています。
そのため日本でも、ZEH住宅建築時に受けられるさまざまな補助金制度が用意されています。
代表的なZEH関連の補助金は以下の通りです。
- 戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化支援事業:環境省
- 次世代ZEH+実証事業:経済産業省
- 地域型住宅グリーン化事業:国土交通省
それぞれの補助金は申請条件が異なるため、補助金申請を予定している方は事前に内容を確認する必要があります。
自分に適した補助金については、建築を依頼するハウスメーカーや工務店に相談しても良いです。
ZEHを建てるときに活用できる補助金については、こちらをご覧ください。
ZEH住宅のデメリット
ZEH 住宅に暮らす家族は多くのメリットが得られますが、一定のデメリットの存在も理解する必要があります。
ただし、ZEH 住宅のデメリットの大半はメリットでカバー可能です。
メリットとデメリットを比較して、自分と家族が選ぶべき住宅は何か考えてみてください。
設備投資のみでなくメンテナンス費用もかかる
家の高気密高断熱化や太陽光発電システムを含むZEH住宅に必要なシステムの設置には、200万円〜300万円程度の費用がかかります。
また、設置したシステムの大半は定期的なメンテナンスが欠かせません。
そのためのメンテンス費用も用意する必要があります。
ただし、太陽光発電システムの設置価格は年々低下しており、今後よりZEH住宅が建築しやすい環境が整うと考えられます。
また、建設時の補助金受け取りや光熱費の大幅な節約が可能な点を考えれば、初期投資とメンテナンス費用は十分回収可能です。
ZEH住宅のコスト面のデメリットが気になる方は、長期的な収支を計算してみてください。
天候次第では発電量が減る
太陽光発電は太陽光エネルギーがなければ電力を創り出せません。そのため、日照時間が創エネに影響を与えます。
多くの地域では夏場よりも冬場の方が創りだせる電力が少なくなるでしょう。特に寒冷地は冬場の創エネが難しい可能性があります。
また、ZEH住宅を建てる土地を一から選ぶのであれば、地域の気候のみでなく将来的に近隣に建築予定の建物についても調べておくと良いでしょう。
近隣の建物の状況次第で日照時間が減るリスクも考えられます。
場合によっては建築予定地の見直しも考えるべきです。
自由な間取りが選択できないこともある
ZEH住宅は通常の住宅よりも多くの設備を設置する必要があり、選択可能な間取り・デザインに制限があります。
特に太陽光発電を設置する屋根は守るべき角度制限が存在します。
ただし、その中でもハウスメーカーや工務店にしっかり自分の好みの間取り・デザインを伝えることで、理想的な住宅を建築できます。
特にZEH住宅の建築実績が多い業者を選べば、満足できる提案がもらえます。
ZEHビルダーとプランナーとは
日本ではZEH住宅を建築可能な業者をZEHビルダー・プランナーとして登録制にしています。
優れた品質のZEH住宅を建築するためには、自分に適したZEHビルダー・プランナーを探す必要があります。
ZEHビルダー
ZEHビルダーはZEH住宅の建築を認定されたハウスメーカーや工務店のことを指しています。
ZEHビルダーは住宅の建築のみでなく、国が支援している「ZEH(ゼロエネルギー住宅)支援事業」の普及に取り組んでいます。
ZEHビルダーであれば、高品質なZEH住宅を建築可能です。
ZEHプランナー
ZEHプランナーもZEH住宅支援の普及に取り組む業者ではあるものの、ZEHビルダーとZEHプランナーは事業者の業種が異なります。
ZEHプランナーは設計事務所が受ける認定であり、ZEH住宅を設計する役割を持っています。
まとめ
ZEH住宅は、省エネと創エネによりエネルギー収支をゼロ以下にする住宅を指しています。
具体的には、住宅の断熱性を高めて省エネシステムを搭載することで消費エネルギーを減らし、太陽光発電システムを設置してエネルギーを創り出します。
エネルギーの自給自足がかなえば、限られた資源を有効活用しながら無理なく光熱費を削減することができます。
さらに、ZEH住宅の建築には多くの補助金制度が用意されています。
これから住宅を建築するのであれば、ZEH住宅を検討することをおすすめします。
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