高気密高断熱の住まいは、気密性と断熱性が高く室内の気温が一定に保ちやすいという特徴があります。
そのため、冷暖房を短時間使うだけで夏涼しく冬暖かい快適な暮らしが手に入るでしょう。
暑さ寒さなどが原因の不調を改善する効果が期待でき、ヒートショックのリスクも減らせます。
今回の記事では、高気密高断熱の住宅のメリットとデメリットについて詳しくまとめました。
これから住まいの建築を考えているのなら、ぜひ参考にしてください。
高気密高断熱の住宅について
高気密・高断熱はそれぞれ別の性能のことを指しています。
ここでは高気密・高断熱の住宅の特徴をまとめました。
高気密・高断熱のための取り組みは、お互いに影響を与えながらより両者の効果を高めています。
高気密住宅の特徴
高気密住宅は、断熱材・防湿シート・気密テープなどを使用して壁の内側や床下を隙間なく埋め、外気が入りにくい状態にしている住まいです。
気密性が上がるために外気がシャットダウンされ、室内の空気が外に漏れ出すことを防ぐことができます。
住まいの気密性はC値という数値で表されます。
C値には「相当隙間面積」という意味があり、延べ床面積1㎡に何㎠の隙間が存在するかを示します。
数値が低いほど気密性が高い状態です。
気密性に配慮されていない一般的な住宅のC値は10㎠/㎡程度、一般的な気密住宅のC値は1㎠/㎡以下になります。
気密性は気密等級A-1〜A-4と分類され、気密等級A-4が最も気密性が高い状態を指しています。
高断熱住宅の特徴
高断熱住宅は外壁・天井裏・床下などに高性能な断熱材を詰め、断熱効果を高めた住まいを指しています。
高断熱住宅は外気の影響を受けにくく、エネルギー使用量を最小限に抑えられることができます。
断熱性能を表す数値にはUa値(UA値)があります。
Ua値は「外皮平均熱貫流率」を指しており、住宅の中と外で1度の温度差がある時に住宅全体の1㎡当たりの熱がどの程度外に流出するのかを数値化することができます。
Ua値もC値と同様、数値が低いほど断熱性が高くなります。
断熱性は地域によって必要な性能が異なり、北海道を除く一般的な地域では0.6W程度が高断熱と考えられています。
断熱性は断熱等性能等級1〜7で分類され、断熱等級6〜7は2022年に新設されました。
高気密高断熱住宅の基準は定められていない
気密と断熱の性能を測る数値は存在するものの、日本ではC値とUa値を使用した高気密高断熱の基準が設定されていません。
そのため、高気密・高断熱に力を入れているハウスメーカーや工務店では、自ら目標値を設定して自社の気密度と断熱度の高さをアピールしています。
高気密高断熱の住宅を建てるメリット
高気密高断熱の住宅を建築することで得られるメリットは次の通りです。
高気密高断熱住宅では、今の暮らしで感じている多くの不満が改善されることが期待できます。
外気温の影響を受けにくい快適な暮らしがかなう
日本には四季があり、冷暖房を使用せずに快適に過ごせる季節は限られています。
さらに近年の異常気象のせいで耐え難い寒さや暑さが続く季節も増えました。
高気密・高断熱の住まいでは室内の気温が外の気温の影響を受けにくいため、冷暖房効率が上がり短時間で室内を快適な温度に変えることができます。
室内の空気が外に漏れ出たり、外気が室内に入り込んだりする問題を最小限に抑えることで、長い時間快適な温度を保つことができます。
さらに、家中の温度が均一化しやすく、エアコンから遠い位置にある場所でも暑さや寒さの問題が起こりにくくなります。
ヒートショックのリスクを減らせる
ヒートショックは気温の急激な変化が原因で血圧が上下し、脳内出血・大動脈解離・脳梗塞・心筋梗塞などの疾患を引き起こすことを指しています。
ヒートショックは毎年多くの方の命を奪う問題であり、具体的には暖房の効いた部屋から寒い脱衣所に移動し、服を脱いで湯船に浸かった瞬間などに起こります。
高気密高断熱の住宅では住宅全体が外の温度の影響を受けにくく、住宅内の気温が大きく変化しません。
そのため、寒暖差が最小限に抑えられ、ヒートショックのリスクを減らすことができます。
冷暖房の光熱費を節約できる
高気密高断熱住宅では外気の影響を受けにくいため、冷暖房効率が高くなります。
その結果、設定温度を高くしなくても冷暖房の効きがよく、光熱費を節約することができます。
一度適温になった室内の温度も長く維持できます。
熱帯夜に何度も暑さで目覚めてしまったり、冬の寒さのせいで朝起きることが難しくなったりすることもありません。
外の音が聞こえにくく家の音が漏れにくい
高気密高断熱住宅は気密性が高いために家の中の音が外に漏れず、外の音も室内に影響しにくくなります。
その結果、大雨の音・電車・車などの音が気になることもなくなるでしょう。
音に敏感だという方には特に、高気密高断熱住宅をおすすめします。
また、線路沿いや道路沿いの土地に住宅を建築しようと考えているのなら、騒音対策の一つとして高気密高断熱住宅を検討することをおすすめします。
長期優良住宅にも高気密高断熱が求められる
長期優良住宅とは、数世代にわたり品質が維持できることが認定された住宅を指します。
長期優良住宅に認められた住宅は資産価値が上がり、減税や保険の控除を受けることができます。
長期優良住宅の評価基準に気密測定はないものの、断熱性に関しては断熱等級5以上が求められます。
長期優良住宅についての情報は、こちらの記事をご覧ください。
高気密高断熱の住宅を建てるデメリット
高気密高断熱の住宅を建築すれば多くのメリットが得られるものの、一定のデメリットも存在します。
高気密高断熱の住宅を建てようと考えているのなら、デメリットも把握する必要があります。
壁の内側や床下の結露がカビにつながる恐れがある
高気密高断熱住宅では、「内部結露」と呼ばれるものが発生する可能性があります。「内部結露」とは外気との温度差により、普段見ることのない壁の内側・床下・天井裏などに発生する結露のことです。
内部結露は、断熱材のわずかな隙間から入り込んだ冷たい空気が室内の暖かい空気と触れることで起こり、カビの原因となります。
内部結露を防ぐためには、外気との温度差を少なくすることが重要です。経年劣化の少ない材料で、外部断熱をしっかり行う必要があります。
空気がこもりやすくハウスダスト対策を考えなければいけない
高気密高断熱住宅は、室内の空気がこもりやすくなります。
その結果、室内の気温が一定に保てるというメリットがある一方で、ハウスダストが長時間室内に止まってしまう問題が起こります。
ハウスダストとは次のようなものを指しており、人間が日常生活を送る中で自然に発生します。
- 花粉
- 煙や排気ガス
- 土砂埃
- カビの胞子
- ペットの毛
- タバコの煙
ハウスダストの3分の1近くは室外から室内に持ち込まれます。
高気密高断熱住宅の場合は、持ち込まれたハウスダストも室内にとどまってしまい、アレルギーの原因となる可能性があります。
一定の設備費用がかかる
高気密高断熱住宅の建築には一般的な住宅よりも多くの設備費用がかかります。
特に高性能な断熱材は高価であり、施工のために優れた技術も必要です。
初期投資のみを見てしまうと、高気密高断熱の住宅を高いと感じる方もいるでしょう。
しかし、節約可能な光熱費を計算して長期的なコストパフォーマンスを考えれば、十分償却可能なコストであると言えます。
石油ストーブやガスファンヒーターは使えない
石油ストーブやガスファンヒーターは、エアコンよりも早くピンポイントに体を温めてくれると感じる方もいるでしょう。
しかし、高気密高断熱の住宅では石油ストーブとガスファンヒーターが使えません。
一般的な住宅では定期的な換気に気をつけていれば、さまざまな暖房器具が活用可能ですが、高気密高断熱住宅は気密性が高いために酸欠や一酸化炭素中毒になる恐れがあります。
住宅を高気密高断熱にする方法
高気密高断熱住宅は、外気の影響を受けにくく、冬暖かく夏涼しい快適な住環境を実現するために重要です。
しかし、性能を最大限に発揮するには、設計や施工において注意すべきポイントが多々あります。
その具体的な方法を詳しく解説します。
高性能な断熱材を選ぶ
高断熱住宅を実現するためには、断熱材の選定が重要です。
断熱材にはグラスウール、発泡プラスチック系断熱材、セルロースファイバーなどさまざまな種類があります。
それぞれの断熱材には特徴があり、例えば、グラスウールはコストパフォーマンスが良い一方で、施工時にしっかりとした充填が必要です。
発泡プラスチック系断熱材は優れた断熱性能を持ちますが、コストが高くなりがちです。
セルロースファイバーはエコな素材であり、隙間なく詰められることで気密性も高まります。
住宅の特性や予算に応じて最適な断熱材を選ぶことが、長期的な快適さに直結します。
断熱材の種類やメリット・・デメリットについては、こちらをご覧ください。
気密性を高める施工方法
住宅の気密性を高めるためには、細部にわたる施工技術が求められます。
気密シートや防湿シートを壁や天井にしっかりと貼り付け、気密テープで接合部分を丁寧に処理することで、隙間を極力減らすことが重要です。
特に、配管や配線が通る場所、窓やドアの取り付け部分は、隙間が生じやすいため、専用の気密パッキンや断熱材で密閉する必要があります。
気密測定(ブロワードアテスト)を行い、C値を確認することも重要です。これにより、施工後の気密性を確保し、断熱性能を最大限に発揮できます。
適切な換気システムの導入
高気密高断熱住宅では、室内の空気がこもりやすいため、換気が非常に重要です。
24時間換気システムを導入することで、常に新鮮な空気を取り入れ、室内の空気を循環させることができます。
このシステムにより、ハウスダストやカビの発生を抑え、健康的な生活環境を維持できます。
また、換気システムのフィルターを定期的に清掃し、システムが正常に機能するようにメンテナンスを行うことが必要です。
これにより、換気不足による健康リスクを防ぎつつ、高気密高断熱住宅の快適さを保つことができます。
窓とサッシの性能向上
窓は住宅の断熱性能に大きな影響を与えます。
高断熱住宅を実現するためには、断熱性能の高い複層ガラスやLow-Eガラスを採用することが推奨されます。
Low-Eガラスは特殊な金属膜でコーティングされており、太陽光の熱を反射して室内の温度上昇を抑える効果があります。
また、樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシは、従来のアルミサッシよりも熱伝導率が低く、断熱性能を向上させます。
さらに、窓の配置やサイズを工夫することで、冬は太陽の熱を取り込み、夏は遮断するパッシブデザインも取り入れることができます。
これにより、自然エネルギーを有効活用しつつ、室内の快適さを維持できます。
プロフェッショナルな施工業者の選定
高気密高断熱住宅の成功には、信頼できる施工業者の選定が欠かせません。
施工業者を選ぶ際には、過去の施工事例やお客様の口コミを確認し、その業者が高気密高断熱住宅の実績を持っているかをしっかりチェックしましょう。
また、気密測定や断熱性能のチェックを適切に行い、施工品質を保証してくれる業者を選ぶことが重要です。
加えて、施工後のアフターケアやメンテナンスサポートが充実している業者を選ぶことで、長期的に快適な住まいを維持できます。
住宅建築は一生に一度の大きな投資ですので、慎重に業者を選定することが大切です。
高気密高断熱の住宅で快適に過ごすために知っておくべきこと
高気密高断熱住宅にはメリットのみでなくいくつかのデメリットが存在します。
しかし、そのデメリットは次のような取り組みで対策可能です。
24時間換気システムを導入して換気に注意する
高気密高断熱住宅には現在、24時間換気システムの設置が義務付けられています。
24時間換気システムを活用すれば、常に室内の空気が入れ替わり、窓を閉め切った状態でもハウスダストが室内に留まる問題を防げます。
室内にいると換気の必要性に気が付きにくいものですが、24時間換気システムは常に稼働させるようにしましょう。
遮熱性の高い窓ガラス・サッシを使用して窓からの熱もカットする
高性能な断熱材を使用しても、暑さが厳しいエリアでは窓から差し込む太陽の熱で室内が暑くなる可能性があります。
高気密高断熱の住まいで窓から室内が暖められると、その温度がそのまま室内にこもってしまいます。高気密高断熱の住宅を建築する際には窓の性能にもこだわり、日射を反射可能な反射性能を備えた窓ガラスを導入するべきです。
また、窓サッシには寒冷地仕様と温暖地仕様のものが存在するので、住まいの建築予定地の気候に合わせて、適切な窓ガラス・サッシを選びましょう。
自宅に最適な設備について、ハウスメーカーまたは工務店に相談してみてください。
高気密高断熱住宅を得意とする会社に依頼する
高気密高断熱の住まいでも、断熱材の隙間をゼロにすることはできません。
目視でも確認しにくいようなわずかな隙間をより減らすためには、高気密高断熱住宅の建築に多くの実績があり、優れたノウハウを持った業者を選択することをおすすめします。
住宅の建築を依頼する業者は、十分は比較検討を行った上で絞っていきましょう。
高気密高断熱住宅を建てて後悔?住宅に高気密高断熱設備は必要か?
高気密高断熱住宅はデメリットが多いため、必要ないと考える人もいます。
しかし、高気密高断熱住宅に存在する多くのデメリットは事前に対策可能なものばかりです。
光熱費の削減や夏も冬も快適な温度で過ごせる点など、メリットの方が多いと考えるべきです。
四季のある日本だからこそ、高気密高断熱住宅を建築することをおすすめします。
また、国土交通省の補助事業として環境共生まちづくり協会より
省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅を住みこなす 住まい方ガイドも公開されています。
ちょっとした住まい方の工夫で、高気密高断熱住宅のメリットを十分に得られるようになるでしょう。
まとめ
高気密高断熱住宅の特徴やメリットデメリットをまとめました。
高気密高断熱住宅を建築すれば、どの季節も室内を快適な温度に保ちやすくなり、ヒートショックのリスクも減らせます。
ハウスダストや内部結露などのデメリットも存在するものの、高い技術力を所持した業者を選定したり24時間換気システムを常に活用したりすることで、大半のデメリットをカバーできます。
暑さ寒さのストレスから解放される暮らしを実現するためにも、高気密高断熱住宅の建築について考えてみてください。
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