注文住宅なら自由設計でフルオーダーができるため、こだわりを詰め込んだ理想の家づくりも実現可能です。
ただ、理想をあれもこれも詰め込もうとすると建築費用がかさんでしまいます。
注文住宅を建てるにあたって「どの程度の予算が妥当なのか」と頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。
この記事では注文住宅の費用相場を解説するとともに、予算の違いによって建てられる住まいのプランがどのように変わるのか紹介します。
この記事を読めば、注文住宅の相場感をつかめるようになり、自分たちにとって最適な予算を知ることができるでしょう。
注文住宅の費用相場は?
注文住宅の取得では、土地も併せて購入するのが一般的です。
ただし、建て替えや相続・贈与などによって取得した土地に注文住宅を建てるケースもあります。
その場合は土地があるため、土地の購入が必要ありません。
その点を踏まえて、さっそく注文住宅の費用相場を見ていきましょう。
住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅の建築費の全国平均は次のとおりです。
- 土地あり注文住宅:3,715.2万円(前年度比+4.1%)
- 土地なし注文住宅:3,194.6万円(前年度比+6.1%)
土地あり注文住宅の建築費のほうが高くなっています。
その理由として、土地ありの場合、土地の取得費がかからないことで家の建築に費用をかけることができるためです。
一方の土地なしの場合は自ずと土地の取得費もかかるため、家の建築費が抑えめになりやすい傾向があります。ちなみに土地なし注文住宅においては土地取得費が別途1,499.5万円かかっています。
土地・建物を併せたマイホーム購入費は、平均4,694.1万円です。
ただし、土地取得費もエリアによって大きく相場が変わります。
東京や大阪といったエリアは土地代が高いことから、全国平均1,499.5万円よりも土地の平均取得費は高くなります。以下はエリア別の土地取得費です。
- 首都圏:2,288.2万円(前年比+3.0%)
- 近畿圏:1,760.4万円(前年比+4.0%)
- 東海圏:1,299.5万円(前年比+2.0%)
- その他地域:927.2万円(前年比+1.6%)
東海圏とその他地域は土地取得費が全国平均よりも低いものの、すべてのエリアで前年比よりプラスになっていることが分かります。
新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ地価でしたが、全国的に回復傾向が鮮明となりました。
・出典:住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」
注文住宅の延べ床面積の平均は?
続いて、注文住宅の延べ床面積を確認していきます。
同調査より、土地あり注文住宅・土地なし注文住宅それぞれの延べ床面積の全国平均は以下のとおりです。
- 土地あり注文住宅:122.8平方メートル(約37.1坪、前年度123.8平方メートルから0.8%減)
- 土地なし注文住宅:111.5平方メートル(約33.7坪、前年度111.4平方メートルから0.1%増)
近年は資源価格高騰や円安に起因する建材費上昇などが大きな要因となり、建築コストが上昇傾向です。
土地あり注文住宅の延べ床面積が減少傾向にあるのも、コストアップが一因と考えられます。
注文住宅の坪単価の平均は?
上記より、土地あり注文住宅の建築費は平均約3,700万円で平均延べ床面積は約37.1坪です。
建築費を坪単価(1坪当たりの価格)に換算すると、約100万円となります。
土地なし注文住宅の場合、建築費は平均約3,200万円で平均延べ床面積は約33.7坪でした。
同じく建築費を坪単価に換算すると、約95万円となります。
土地を併せて購入するケース、所有する土地で建て替えをするケースどちらでも、注文住宅の建築費は坪単価100万円前後が相場といえるでしょう。
注文住宅を建てる費用の内訳は?
注文住宅を建築する際にかかる費用の内訳は、どのようになっているのでしょうか。
注文住宅を建てるときの費用は、大きく「土地代」と「建物の建築費」に分けられます。
それぞれの内容を見ていきましょう。
土地の購入費
土地購入に関する費用は、土地代だけではありません。
土地の購入経路によっても関連費用の内訳は異なり、自分たちで不動産会社を介して土地を購入した場合、不動産会社への成功報酬として仲介手数料を支払うのが一般的です。
施工会社に土地も探してもらうケースでは、仲介手数料がかからないこともあります。
仲介手数料は上限額が定められており、取引額が400万円を超えるときは「土地価格×3%+6万円」が上限となります。
1,500万円の土地を購入するケースでは、1,500万円×3%+6万円=51万円が仲介手数料の上限です。
土地を購入すると登記する必要があるため、登録免許税や司法書士への報酬など登記関連費用がかかります。
ほかにも土地の地盤が軟弱だった場合、地盤改良費用が別にかかることもあります。
また、つなぎローンを組む場合には事務手数料や印紙税といった諸費用が別途かかります。
住宅ローンは完成した建物を担保にして融資が行われますが、注文住宅では建物完成前に土地代や中間金などを支払うのが一般的です。
住宅ローンの融資実行までの間、注文住宅建設に必要な資金を一時的に肩代わりしてくれるのがつなぎローンです。
注文住宅の建築費
建物の建築費のうち約75%を「本体工事費」が占め、約20%が「別途工事費」、残りの約5%が「諸費用」というのが一般的な内訳です。
先ほどの土地なし注文住宅の平均建築費用約3,200万円を例に考えると、本体工事費が約2,400万円、別途工事費が約640万円、残りの約160万円が諸費用という金額感になります。
本体工事費とは建物本体を建てるためにかかる工事費のことで、坪単価と表記されるときは本体工事費を指すケースが一般的です。
別途工事に含まれるのは、家屋の解体費用や外構工事にかかる費用、水道やガスの引き込み工事にかかる費用などが該当します。
諸費用に含まれるのは、火災保険や地震保険などの各種保険料、契約書にかかる印紙税、引っ越し費用、住宅ローン借入時にかかる融資手数料・保証料といった費用です。
新居に引っ越すにあたって家具や家電を新たに購入する場合、それにかかるコストも諸費用に入ってきます。
注文住宅の価格を左右する要素
注文住宅の平均的な相場を見てきましたが、注文住宅は個別性が強く、同じような立地の物件でも価格はさまざまです。
それでは注文住宅の価格はどのような要素に影響されるのでしょうか。この章では、注文住宅の価格を左右する4つの要素について解説します。
建物の構造
同じ延べ床面積の注文住宅を建てるとしても、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造といった建物構造によって坪単価が異なってきます。
国土交通省「建築着工統計調査 住宅着工統計(2022年度)」によると、木造戸建ての持ち家における1平方メートル当たりの工事費予定額は23万円。1坪=3.3平方メートルとすると、木造の坪単価は23万円×3.3平方メートル=75.9万円です。
鉄骨造の戸建て持ち家では1平方メートル当たりの工事費予定額が32万円であり、坪単価は32万円×3.3平方メートル=105.6万円となります。
同様に、鉄筋コンクリート造の戸建て持ち家の1平方メートル当たりの工事費予定額は42万円、坪単価は42万円×3.3平方メートル=138.6万円です。
上記のとおり、木造はほかの構造に比べて建築費が抑えられます。
機能性よりも設備や内装などを重視する人は、木造にすることでこだわりたい部分に資金を充当できるでしょう。
・出典:e-Stat「建築着工統計調査 住宅着工統計(2022年度)」
土地の形状
土地の形によって建築費が高くなるケースもあります。
例えば、旗竿地は建築費が高くなりやすい土地形状の典型です。
旗竿地とは路地状通路によって道路に接している土地のことで、間口が狭いために評価は低くなります。
一方で、間口の狭さゆえに重機やトラックが敷地内に入れないことも多く、建築コストは高くなりやすいのです。
また、狭い土地や隣家が近い土地なども工事上の制約が多いため、建築コストが割高になります。
職人用の駐車場を別途確保しなければならない場合、さらに費用は高くなります。
都市部では土地代を抑えるために狭小地を取得するケースもありますが、注文住宅建築時のコストは高くなりやすいため注意が必要です。
住宅の形状
建物や屋根の形状によっても、注文住宅の建築コストは変わってきます。
住宅はシンプルな箱型のものが最も建築費を低く抑えられ、凹凸の多い複雑な形状になるほどコストがかさむ傾向にあります。
具体的には、1階と2階の大きさが違う家、四方もしくは三方を建物で囲まれたロの字型・コの字型の中庭がある家などが該当します。
このような建物は建材の必要量が多いうえ、施工の手間がかかるためコストは割高です。
寄棟屋根、入母屋屋根、複数の屋根タイプを組み合わせた複合タイプの屋根など、複雑な屋根形状の住宅も建築費が高くなりやすいとされます。
設備のグレード
注文住宅にかかる建築費のなかでも、比較的多くの割合を占めるのが設備関係のコストです。
キッチン、浴室、トイレ、洗面所などの水回りのグレードは建築費に大きく影響します。
水回り設備はメーカー・商品ごとに幅広いものがあり、スタンダードなものとハイグレードのものでは価格に大きな差があります。
目に触れやすく日常的に使用するものなので、できればこだわりたいポイントではあるものの、気を付けないと予算オーバーになりやすい部分です。
例えば、トイレを見た目が良く高機能なタンクレスタイプにする、キッチンのワークトップを人工大理石にするなど、こだわろうと思えばいくらでもこだわれます。
グレードやオプション設備を自由に選択できるのが注文住宅のメリットですが、こだわりとコストのバランスを踏まえて検討したほうがよいでしょう。
予算別で変わる住まいのプラン
かける予算によって、建てられる注文住宅の姿はどのように変わるのでしょうか。
ここでは1,000万円台・2,000万円台・3,000万円台・4,000万円台の4つの予算パターンによって、住まいのプランがどう変化するのか紹介します。
1,000万円台の住まいプラン
予算1,000万円台で建てる注文住宅は、いわゆる「ローコスト住宅」と呼ばれるタイプです。
住まいプランには、一般的に次のような特徴があります。
- 外観は総二階(1階・2階がほぼ同じ床面積やつくりをしている間取り)、正方形や長方形のシンプルな形状
- 外観のデザインもシンプル、素材や色は全体的に統一
- 住宅設備は標準仕様を中心としてコストを削減
- 開口部の大きさや窓の数を調整してコストを削減
1,000万円台の注文住宅は、全体的にシンプルで無駄のないつくりの家になるでしょう。
2,000万円台の住まいプラン
予算2,000万円台だとローコスト住宅から平均的な住宅の領域ですが、部分的な設備や仕様のアップグレードが可能となり、1,000万円台の住宅に比べると理想を叶えやすくなるでしょう。
2,000万円台の住まいプランの特徴は次のとおりです。
- シンプルな形状を基本としつつ、バルコニーや窓を増やすなど多少凹凸を取り入れたデザインも実現可能
- 優先順位をつけながら一部の住宅設備のグレードアップが可能
- 浴室乾燥機や食器洗い乾燥機などのオプション設備も検討可能
- 耐熱性や断熱性を高めた家づくりも検討可能
すべての希望を叶えるのは難しいかもしれませんが、工夫すれば理想に近い家づくりができます。
3,000万円台の住まいプラン
最初に説明したように、注文住宅の建築費の全国平均が3,000万円台です。
3,000万円台の注文住宅は「ミドルコスト住宅」であり、設備のグレードや外装材にこだわることも可能になるでしょう。住まいプランには次のような特徴があります。
- 延べ床面積が広めの住宅を建てることも可能
- 中庭や広いバルコニーといった複雑な形状をともなう間取りも検討可能
- 外観のテイストや外壁材をこだわることも可能
- 最新式や高グレードな設備を導入可能
- 全館空調や床暖房などを採用して快適性を向上できる
1,000万円台・2,000万円台に比べ、こだわりを叶えやすい予算といえます。
4,000万円台の住まいプラン
予算4,000万円台となれば、建築費の全国平均を上回ってくるので予算は潤沢です。
標準コスト住宅であり、注文住宅で叶えたい内容はだいたい取り入れられるでしょう。
4,000万円台の住まいプランの特徴は以下のとおりです。
- L字型や立体的な構造など複雑な形状も実現可能
- 木造のほか鉄骨造での建設も検討範囲
- 広い中庭、大きな吹き抜けといったオリジナリティのある間取りも検討可能
- 設備の全体的なグレードアップが可能
- 断熱性や省エネ性を高めた家づくりもできる
居住性・安全性・デザイン性にこだわって、個性ある住宅を実現できるのが予算4,000万円台のプランです。
注文住宅の費用を抑えるポイント
注文住宅を建てる際、費用を抑えたいと考える方は少なくありません。
ここでは、費用を抑えるためのポイントを紹介します。
エリア選びを工夫する
土地の価格は、注文住宅の費用全体に大きな影響を与えます。
都市部や人気のあるエリアでは土地代が高騰しがちで、その結果、建築にかけられる予算が限られてしまいます。
エリア選びに工夫を凝らすことで、土地代を抑えることが可能です。
具体的には、都心から少し離れた郊外や、再開発が進むエリア、地価が比較的安い地域を検討するのが有効です。
たとえば、少し都心から離れたエリアでも、公共交通機関の便が良く、将来的に地価が上昇する可能性がある地域は、コストを抑えつつも、資産価値を保つことができます。
また、角地や変形地といった土地形状が特徴的な土地も、評価が低く価格が抑えられることが多いため、工夫次第で建築費用を削減できます。
シンプルな間取りとデザインを選ぶ
注文住宅の建築費用を抑えるためには、シンプルな間取りとデザインを選ぶことが有効です。
複雑な間取りやデザインは、建材の使用量が増えるだけでなく、施工に手間がかかり、その分費用がかさむ原因となります。
例えば、総二階建てや、正方形・長方形の箱型の住宅は、シンプルでありながらも機能性が高く、建築コストを低く抑えることが可能です。
さらに、屋根の形状をシンプルにすることも、建材や施工の手間を減らすため、費用削減に繋がります。
寄棟屋根や複雑な形状の屋根に比べ、片流れや切妻といったシンプルな屋根は、施工が比較的簡単で、コストがかかりにくい特徴があります。
また、建物の形状だけでなく、内部の間取りについても、開口部の大きさや配置、部屋の数をシンプルにすることで、無駄を省き、コストを抑えることができます。
部屋数を減らし、オープンなリビングスペースを設けることで、施工面積が減り、結果的に費用が削減されます。
こうしたシンプルなデザインと間取りを取り入れることで、無駄なコストを抑えつつ、機能性と快適性を両立させた住まいを実現することが可能です。
標準仕様を活用する
注文住宅の魅力は、自分好みにカスタマイズできる点にありますが、すべてをカスタマイズしようとすると費用がかさむことになります。
そのため、標準仕様をうまく活用することで、費用を抑えることが可能です。
例えば、住宅設備の選定において、標準仕様のキッチンやバスルーム、トイレなどを採用することで、カスタムオーダーに比べてコストを大幅に抑えることができます。
標準仕様はメーカーや工務店が提供する基本プランに基づいているため、価格が抑えられていることが多く、同時に品質も保証されているケースが多いです。
さらに、内装の仕上げ材や床材、壁紙なども標準仕様を選ぶことで、デザイン性を保ちながらコストダウンを図ることができます。
特に、壁紙や床材などは、施工面積が広いため、カスタム仕様にすると全体の費用に大きな影響を及ぼします。
そのため、標準仕様の中から自分の好みに合うものを見つけることで、コストを抑えつつも納得のいく仕上がりを実現することができるでしょう。
資金計画を見直す
注文住宅の費用を抑えるためには、資金計画をしっかりと見直すことが重要です。
初めに予算を設定し、それに基づいてプランニングを行うことで、無駄な費用を避けることができます。
まずは、全体の予算を明確にし、どの部分にどれだけの費用をかけるかを決めることが大切です。
建物の本体工事費、別途工事費、諸費用など、各費用項目ごとに細かく予算を設定することで、コスト管理がしやすくなります。
また、見積もりの際には、複数の業者から見積もりを取得し、比較検討することが必要です。
異なる業者からの見積もりを比較することで、費用の透明性が確保され、最適なコストでの契約が可能になります。
さらに、建築途中で予算オーバーにならないよう、資金計画には余裕を持たせることも重要です。
予期せぬ費用が発生した場合に備えて、予備費を確保しておくことで、急な出費にも対応できるようにしましょう。
注文住宅の予算オーバーしたときの対処方法
近年はエネルギー価格や建材費の高騰、円安の影響で住宅の建築コストが高騰しており、予算オーバーしやすい状況です。
ここでは、注文住宅の予算がオーバーしたときにコストを削る方法を解説します。
土地のエリアはこだわりすぎない
土地代はエリアの地価によって変動します。
希望に合う土地だと予算内に収まらないのであれば、エリアにこだわりすぎず、より地価の安いエリアまで範囲を広げて検討しましょう。
土地代を抑えるには単価の低い土地を探すか、面積や土地形状などの希望条件を見直すしかありません。
幅広いエリアにリサーチをかけることで、予算内でも条件に合う土地が見つかる可能性があります。
床面積を見直す
予算オーバーしているときは、床面積の見直しも検討しましょう。
建築する家が大きくなるほど、単純に施工しなければならない基礎・屋根・外壁面積が増えます。
床面積を小さくすれば施工面積も減るので、全体的にコストを抑えることができます。
先述のように、形状や間取りが複雑な家や窓の多い家は建築コストが高くなりやすいため、シンプルな形状・間取りに変更する、窓の数を減らすといった見直しでもコストダウンが期待できます。
セミオーダーの注文住宅にする
土地や床面積をそのままにしてコストを抑えたいのであれば、「セミオーダー住宅」にする方法もあります。
セミオーダー住宅とは、住宅メーカーや工務店があらかじめ用意した選択肢のなかから好きなものを選ぶ注文住宅のことです。
間取り・設備・仕様などをイチから選ぶフルオーダーの注文住宅に比べると自由度は下がりますが、コストをある程度抑えながら自分好みの住まいを実現できます。
家へのこだわりは優先順位をつけておこう
注文住宅の建築費の相場は3,000万円台ですが、こだわりをふんだんに盛り込むと予算オーバーしやすいのが注文住宅の特徴です。
なるべく理想に近い住まいを予算内で実現するには、こだわりに優先順位をつけておくことが大切です。
加えて、優先順位や価値観をくみ取って提案してくれる、信頼できる担当者と巡り合わなければスムーズな意思疎通ができません。
コミュニケーションがうまくいかず、結果的に理想の家づくりが叶えられない可能性もあります。
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